文化の家 (フィンランド)

文化の家（クルトゥーリタロ）

フィンランドの首都ヘルシンキ、アルッピラ地区に位置する「文化の家」は、建築家アルヴァ・アールトによって設計された、戦後モダニズムを代表する建築物です。フィンランド語では「Kulttuuritalo」と呼ばれ、文化会館としても知られています。この建物は、コンサートホール、事務室、講義室など、多岐にわたる機能を併せ持つ複合施設として、地域文化の中心的な役割を担っています。

来歴

1951年、文化の家の建設を管理する「Helsingin Kulttuuritalo Oy」が設立されました。アールトは、以前フィンランド国民年金協会の本部ビルを設計した際に知り合った、フィンランド共産党の政治家、マッティ・ヤンフネンから、フィンランド人民民主同盟の本部機能に加え、文化センターや協会施設としての機能も持つ複合施設の設計を依頼されます。1952年には、アールトによって詳細な設計のドラフトが作成され、1955年に建設工事が開始されました。

この建設工事には、5,000人を超える人々が携わったとされ、その多くがボランティアとして参加しました。この事実は、文化の家が地域社会に深く根ざした存在であることを示しています。1958年に建設工事が完了し、その後、1980年代末までに数回の改修工事が行われました。1989年には建造物保護法が適用され、2013年には大規模なリノベーション工事が実施されています。

構造

文化の家は、コンサートホール棟と事務室棟を主軸に構成されています。これらの2棟は、通り側ではキャノピーによって、敷地の奥では講義室棟によって繋がっています。

コンサートホール棟

コンサートホール棟は扇状に広がっており、1,500席以上を誇るコンサートホールの他に、劇場やレストランも備えています。この棟のファサードは特徴的な凸状になっており、アールトが開発した特殊な曲線形状のレンガが使用されています。このレンガの使用は、建物の外観に独特の表情を与えています。

事務室棟

事務室棟は5階建てで、会議室などを有しています。直方体の形状をしており、外装は銅板で仕上げられています。この銅板は、時間とともにその色合いが変化し、建物の歴史を物語る要素となっています。

講義室棟

講義室棟は中央棟とも呼ばれ、講義室やロビーなどが設けられています。この棟は、コンサートホール棟と事務室棟をつなぐ役割を果たし、施設全体の動線を円滑にする役割を担っています。

キャノピーと中庭

キャノピーは、約60メートルの長さを持ち、圧延鋼材が剥き出しで使用されています。コンサートホール棟と事務室棟に挟まれた空間は中庭になっており、講義室やクラブ室、レストランへの入り口があります。中庭には、彫刻家ヴァイノ・アールトネンの手による青銅製の彫刻作品が設置されています。この彫刻は、文化の家の模型を持っている手をかたどったもので、この施設に対する深い敬意と愛情が込められています。

まとめ

文化の家は、アルヴァ・アールトの独創的なデザインと、地域住民の熱意によって建設された、フィンランドを代表する建築物の一つです。その独特な構造と歴史は、今も多くの人々を魅了し続けています。

参考文献

• - 和田菜穂子（編）『アルヴァ・アアルト もうひとつの自然』国書刊行会、2018年10月。
• - Michael Trencher 著、平山達 訳『アルヴァー・アアルト - 建築ガイドブック』丸善、2009年4月。
• - 小泉隆『アルヴァ・アールトの建築 エレメント&ディテール』学芸出版社、2018年3月。

外部リンク

• - 公式ウェブサイト

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