文芸講話

文芸講話について

文芸講話（ぶんげいこうわ）は、1942年5月に中国の延安で開催された文芸座談会において毛沢東が行った講話を基にして整理された文書です。この講話は、公式には「延安文芸座談会での講話」と呼ばれ、1943年10月には「解放日報」にて発表されました。その後、広く普及し、多くの単行本として発行されることとなりました。

中華人民共和国成立後の1953年に、毛沢東の著作集「毛沢東選集」第三巻が刊行される際に大幅な改訂があり、その選集版が現在の公式な版本となっています。一般に中国ではこれを『講話』と略称し、毛沢東の文献としての重要性が強調されています。また、座談会直後に毛沢東の確認を経ない形で速記録が関係者に配布されたと言われていますが、その記録は現在はほとんど残っていません。今では「解放日報」版が『毛沢東集』（蒼蒼社　1983）として収録され、読むことが可能です。

内容の概要

文芸講話にはいくつかの重要な提起が含まれており、その中でも主に次の三つに焦点が当てられています。まず一つは「文芸の労農兵への方向」です。これは当時、文芸に携わっていた作家や芸術家に対して、労働者や農民、兵士の視点に立つことを強く求めるもので、労農兵が喜ぶ作品の創作を求めています。

次に「知識人の思想改造」が挙げられます。毛沢東は、当時延安に集中していた都市出身の知識青年たちに対して、その多くが小資産階級という出自から革命に対して抱いていた期待とは裏腹に、厳しい現実に失望し、批判的な態度を取ることがあったことを指摘しました。毛沢東は、彼らの思想を労農兵の中に入り、改善させることが重要であると主張しました。

最後に「芸術評価における政治的基準の優先」が述べられています。これは、特に解放区の厳しい現実においては、作品評価が政治的な要素から強く影響を受けることを示唆しています。この見解は、文芸と政治が切り離せない関係にあることを示しており、毛沢東の文芸に対するアプローチを象徴するものです。

文芸講話の影響

文芸講話自体は、抗日戦争中における解放区の文芸界の問題を解決するための一環として行われたものですが、その後、中華人民共和国が成立すると同時に毛沢東の権威が上昇し、中国文学の基本的な方向性を提示する重要な著作として認識されるようになりました。文化大革命の終結後の1980年代からは、徐々にこの講話の重要性が薄れていきましたが、現在でも中国共産党は毛沢東の主要著作として位置付けています。

日本においても、岩波文庫で翻訳されたことで多くの読者に親しまれ、その影響力は広がっています。文芸講話は、文学と政治との関わりを理解するための重要な資料であり、今後も研究の対象となることでしょう。

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