文錦渡事件

文錦渡事件 (ぶんきんとじけん)

文錦渡事件は、1967年8月に香港の中港境界で発生した衝突事件で、当時、香港は六七暴動の影響を受けていました。この事件は、境界を越えて働く中国大陸側の運送業者たちの抗議から始まり、港側警察との緊張が高まりました。

事件の経緯

事件は1967年の夏、香港と中国の境界にある文錦渡にて発生しました。6月から続いていた六七暴動の影響で香港社会は緊張状態にあり、左派の抗議活動が高まっていました。特に、5月からの労働争議と文化大革命の影響が相まって、暴動が加速していました。この状況を受け、香港政庁は一部地域で夜間外出禁止令を発令し、治安維持に努めていました。

8月5日、中国大陸からの労働者30人が文錦渡の検問所で毛沢東思想に関連するスローガン撤去に不満を示し、警察本署を包囲する事態が発生しました。その際、大陸側の労働者たちは警察署内にあった銃器を奪い、激しい抗議を展開しました。香港側からは大埔理民官のトレバー・ジョン・ベッドフォードと英軍のピーター・マーティン准将らが交渉に入ります。

交渉の結果、労働者たちはスローガンの掲示や安全確保についての保証書に署名し、最後には解散することに合意しました。しかし、その後の数日間に、再び抗議活動が盛り上がりを見せました。8月9日には別のグループも文錦渡にて抗議行動を行い、警察によって警戒が強化されました。この緊張感が高まる中、8月10日には事態はさらに悪化しました。

緊迫した状況

8月10日、労働者たちは文錦渡警崗に押し寄せ、警察や英軍を包囲しました。労働者たちは、過去に行われた3つの保証の履行や鉄条網の撤去を求めました。この要求に対し、ベッドフォードとマカリスターらが交渉に入りますが、両者の交渉は膠着状態に陥りました。労働者たちは警察官たちを警察署内に閉じ込め、強い圧力をかけました。

午後11時過ぎ、労働者たちは警察の鉄条網を破り、ベッドフォードたちを脅して武装解除を強要しました。緊迫した状況において、ベッドフォードやマカリスターは「供述証書」に署名せざるを得なくなりました。労働者たちの脅迫下での署名後、彼らは解放され、武器も返還されました。

政府の反応とその後の影響

事件が解決した後、香港政庁はこの「供述証書」を承認しない旨の声明を発表しました。さらに、状況が落ち着くまで中港間の境界を完全に封鎖することを宣言しました。この事件は、港側の政庁と中華人民共和国との関係に深刻な影響を与え、文錦渡事件は戦後香港の歴史における重要な出来事の一つとして記憶されています。

このような経緯の中で、文錦渡事件はコミュニティの分断を象徴する出来事となり、後に続く様々な抗議運動やデモに影響を与えることになります。さまざまな要因が互いに絡み合った結果、香港社会の緊張と反発の歴史を形作る一環として、この事件は忘れてはならない重要なトピックとなっています。

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