夜間外出禁止令

夜間外出禁止令：歴史と世界各国の事例

夜間外出禁止令は、政府が例外を除き、市民の夜間の外出を禁止する措置です。一般的に、夜間は午後5時以降翌日午前8時までと定義されます。この措置は、歴史的に治安維持や軍事上の理由から実施されてきました。

歴史的な背景

古くは唐の長安において、夜間の外出を制限する「夜禁」が存在し、違反者には鞭打ちの刑が科せられていました。現代でも、中南米など政情不安定な地域では、散発的に夜間外出禁止令が発令されることがあります。また、自然災害発生時にも、安全確保のために発令されるケースがあります。1994年のノースリッジ地震では、地震発生後に夜間外出禁止令が出されました。

人種差別との関連

南アフリカのアパルトヘイト政策下では、アフリカ系住民に対して、午後9時以降の居住地域からの外出が禁止されていました。これは人種差別的な政策の一環として実施され、人権侵害の深刻な事例として認識されています。

パンデミック対策

2020年の新型コロナウイルス感染症の世界的流行においても、感染拡大防止策として、チュニジア、ボリビア、セルビア、アメリカ合衆国のニュージャージー州やプエルトリコ、フィリピンのマニラなどで夜間外出禁止令が発令されました。

各国の事例

アメリカ合衆国では、警察官による黒人男性の射殺事件や暴動発生を受けて、ボルティモアやシャーロットで夜間外出禁止令が発令されたことがあります。これらの事例は、人種差別問題と治安維持の課題が複雑に絡み合った状況を示しています。

韓国では、独立直後から朝鮮戦争を経て、1988年まで長期間にわたって夜間通行禁止令が実施されました。当初は治安維持を目的としていましたが、次第に経済活動への影響も考慮され、段階的に解除されていきました。特に、ソウルでは、夜間通行禁止令によって、深夜の帰宅ラッシュが激化し、タクシーの争奪戦が日常的に発生していました。

チリでは、1973年の軍事クーデター以降、ピノチェト政権下で長期間にわたり夜間外出禁止令が実施され、1990年の政権交代後も、2019年のチリ暴動の際に再び発令されました。

日本では、全国の地方自治体が青少年の保護育成条例を制定しており、18歳未満の者の深夜外出を事実上制限しています。これは、青少年の非行防止や安全確保を目的としたものです。東京都青少年の健全な育成に関する条例などがその例として挙げられます。

その他

夜間外出禁止令は、非常事態宣言と併せて発令されることもあります。ホンジュラスでは、2017年に非常事態宣言と同時に夜間外出禁止令が発令されました。

まとめ

夜間外出禁止令は、歴史的に様々な理由で世界中で実施されてきた措置です。治安維持、災害への対応、パンデミック対策、人種差別政策など、その背景は多岐に渡ります。それぞれの社会状況や歴史的背景を理解した上で、この措置を捉えることが重要です。現代においても、世界各地で、様々な状況下で夜間外出禁止令が発令されており、その有効性や人権への配慮について、継続的な議論が必要とされています。

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