斎藤彦内

斎藤彦内とは

斎藤彦内（さいとう ひこない）は、1709年に陸奥国伊達郡（現在の福島県伊達市）に生まれた江戸時代の農民です。1750年5月22日（旧暦寛延3年4月17日）に、42歳で亡くなりました。

彼は、「天狗廻状騒動」として知られる大規模な農民一揆の指導者の一人であり、義民として地域の人々から敬われています。

生涯

彦内は、伊達郡長倉村の斎藤実盛の家系に生まれました。当時の信達地方では、冷害による不作が続いており、農民たちは厳しい生活を強いられていました。

1749年（寛延2年）には、特に被害が甚大で、「田方立毛青立」と記録されるほど、作物はほとんど実りませんでした。この状況に対し、福島藩や周辺地域では年貢の減免が行われましたが、隣接する桑折の代官は、農民たちの減免の訴えを退け、逆に年貢を2分5厘も引き上げたのです。

追い詰められた農民たちは、「わらだ廻状」（後に「天狗廻状」と呼ばれる）という連判状を信達地方の68の村々に回し、密かに協議を重ねました。その結果、長岡村の彦内、鎌田村の猪狩源七、伊達崎村の蓬田半左衛門らが総代として選出されました。

彦内らは、数回にわたり代官に年貢の減免を願い出ましたが、聞き入れられませんでした。そのため、16,800人を超える農民たちが一揆を起こし、代官所に押し寄せました。その結果、年貢は引き下げられましたが、多くの組頭や百姓代が捕らえられ、厳しい取り調べを受けました。

この状況を見かねた彦内は、自らが首謀者であると名乗り出て出頭しました。そして一揆の翌年4月17日、現在の伊達市と桑折町に隣接する河原で、半左衛門、源七とともに処刑されました。

顕彰

彦内らの義挙は、1908年に半井桃水によって東京朝日新聞で小説「天狗廻状」として連載されたことで、広く知られるようになりました。この小説は後に映画化もされ、大きな反響を呼びました。

1918年には、刑死した3人を称える石碑が伊達町（現在の伊達市）に建立されました。また、1979年には、伊達町・福島市・桑折町の協力により、処刑の現場を記念する碑も建てられています。

彦内の墓は、斎藤家の菩提寺である福島県伊達市の福源寺にあります。彦内は義民として地域の人々から崇敬されており、毎年4月17日には「寛延三義民供養祭」が執り行われています。2016年と2017年の供養祭では、福源寺境内での讃歌奉納や、墓前での読経、焼香などが行われました。

まとめ

斎藤彦内は、苛酷な年貢と飢饉に苦しむ農民を救うために、自らの命を犠牲にした義民です。彼の勇気ある行動は、現代においても語り継がれ、多くの人々に勇気と希望を与え続けています。斎藤彦内は、単なる歴史上の人物ではなく、地域の人々の心の拠り所として、今もなお生き続けています。

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