斎藤浩

斎藤 浩（さいとう ひろし）

1945年8月生まれ。日本の弁護士として、主に行政関係事件を中心に活動を展開しており、大阪弁護士会に所属しています。弁護士法人FAS淀屋橋総合法律事務所の代表社員を務め、その専門性と豊富な経験に基づいた多数の著作でも知られています。

生い立ちと背景

1945年8月、東京大空襲で自宅を焼失した後、母親の実家がある岡山県津山市で誕生しました。父は大阪工業大学で土木工学を、兄は大阪市立大学で建築・都市計画学を教えるなど、学術・技術分野に縁のある家庭で育ちました。父方の祖先には、江戸時代末期に西洋医学や種痘術を日本にもたらした壬生藩の医師、斎藤玄昌（1809〜1872年）がいます。

経歴

京都大学法学部を卒業後、地方自治体での勤務を経験。その後、1975年に大阪弁護士会に弁護士登録しました。過去には、立命館大学大学院法務研究科で教授を務めたほか、日本公法学会会員、近畿災害対策まちづくり支援機構の運営委員および付属研究会代表、行政関係事件専門弁護士ネットワーク（ぎょうべんネット）代表理事、日本弁護士連合会行政訴訟センター委員長などを歴任し、幅広い分野で貢献しています。

主要な活動分野と主張

行政訴訟の専門家として

行政を相手とする訴訟において、常に国民側・住民側の立場から活動することを重視しています。その経験と理論を集約した著書『行政訴訟の実務と理論』は、行政を特別視せず、情報が行政に偏在する状況ではむしろ国民に有利な訴訟運用が必要であるという主張を展開しています。従来の抗告訴訟の概念や和解の扱いに批判的な立場を取り、行政事件訴訟法や行政不服審査法の改正に関する国会審議では、公述人として提言を行いました。

司法制度改革への関与

21世紀初頭の司法制度改革においては、司法制度の規制緩和の重要性を主張し、政府との協力を是とする立場から、一部の人権派弁護士や学者との間で論争を巻き起こしました。この論争は、著書や論文、共著『誰が法曹業界をダメにしたのか もう一度、司法改革を考える』などでも展開され、司法制度改革のあり方について活発な議論を提起しました。

災害復興支援と士業連携

阪神・淡路大震災以降、災害時の救援・復興活動において、弁護士が狭い専門分野を超えて、被災者のニーズに応えるワンストップ相談体制を築くため、税理士、司法書士、建築士などの他士業との連携が不可欠であると強く主張しました。この主張は当初、一部で論争となりましたが、現在では、士業と学者が連携する「近畿災害対策まちづくり支援機構」のような組織が設立され、東日本大震災からの復興支援や将来の災害への備えに貢献しています。

組織コンプライアンスと内部告発者支援

組織のコンプライアンス問題にも深く関わっています。豊能郡美化センターのダイオキシン労災訴訟では弁護団長を務め、メーカーとの間で和解を成立させました。また、大阪いずみ市民生活協同組合で発生した不祥事に関連し、内部告発によって懲戒解雇された職員の弁護を担当。裁判では原告側の勝訴を勝ち取り、内部告発者の権利保護の重要性を示しました。

原子力問題への提言

反原発の立場から発言しています。編著『原発の安全と行政・司法・学界の責任』や論文では、行政や学界の一部にみられる、電力業界との関係性や、原発問題における司法の及び腰な姿勢（裁判官が行政の判断に敬譲心を持つべきという議論など）を批判し、民事・行政いずれの裁判においても、裁判官が自らの良心に従って判断すべきであると主張しています。

その他の活動

弁護士としての活動に加え、タウン誌「おおさかの街」の発行人・主筆として24年間にわたり文化活動に携わりました。また、1983年と1987年には大阪市長選挙に立候補するなど、市政への関心も示しました。

斎藤弁護士は、行政訴訟における国民の権利保護、災害時の士業連携の推進、司法制度改革への提言、組織の公正性追求、そして原子力問題に至るまで、幅広い分野でその専門知識と行動力を発揮し、日本の法曹界や社会に大きな影響を与えています。

*出典に示された情報に基づき記述しています。

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