斜面移送システム

斜面移送システム

斜面移送システム（しゃめんいそうシステム）は、長崎県長崎市に設置されている歩行者支援のためのシステムです。このシステムは、特に高齢者や障害者など、移動が困難な人々にとっての移動手段を提供することを目的としています。

背景

長崎市では、地形の特性上、多くの地域が斜面に覆われており、市街地の約70%が斜面地となっています。このため、家屋が密集している地域では用地の買収が難しく、道路の整備も進まず、住民の移動が極めて不便な状況にありました。特に高齢者や障害者にとって、階段の利用は大きな課題となっていました。このような背景から、1999年に長崎市と民間企業が協力して、斜面を安全かつ快適に移動できるための技術研究と開発が始まりました。

システムの導入

2001年には、グラバー園に小型モノレールが導入され、以降も長崎市内の他の場所に設置が進みました。2002年から2004年にかけて、市道の3箇所にもこのシステムが導入されており、2002年度には全日本建設技術協会から「人と建設技術」賞を受賞しました。

このシステムは、特に高齢者、通院中の患者、乳幼児を抱える家庭など、階段の利用が困難な人に対して無償で提供されていますが、利用するには一定の申請と登録が必要です。システムの運行速度は分速15m（時速0.9km）で、一段の階段を上る時間は約4秒です。この速度は、健康な人にとっては歩行の方が早いため、主に移動に困難を感じる方を対象としています。

斜面移動支援機器「SARUKU」

また、長崎市には「電動手すり機」SARUKUという斜面移動支援機器が十人町に設置されています。この機器は、従来の手すりにレールを取り付け、感圧式スイッチにより使用者が手すりを握ると動き出し、手を離すと停止するという仕組みです。手すりには約2Kgの手提げ荷物を載せることもできます。SARUKUは、長崎大学と長崎市の信栄工業、作業療法士の協力によって開発されました。

市内には斜行エレベーターやエスカレーター、簡易のゴンドラも設置されていますが、これらの設置には大規模な工事と高額なメンテナンス費用が必要です。また、狭い道幅のため、こうした設備を設置することが難しい地区も多く、十人町ではそのような条件に対応するため、電動手すりが導入されたのです。2015年に試験的に導入され、以降多くの方々に利用されています。

結論

長崎市における斜面移送システムと斜面移動支援機器は、高齢者や障害者、乳幼児を持つ家庭にとっての移動手段として非常に重要な役割を果たしています。これらの取り組みは、地域社会の生活の質を向上させるための新しい試みであり、今後もさらなる発展と普及が期待されます。

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