斫り

はつり：コンクリート構造物を削る技術

建設現場において、コンクリート製の壁や床などの構造物を壊したり、形を整えたりするために、表面を削る作業を「はつり」と言います。一般的には人力による小規模な作業を指し、建物を完全に解体するような大規模な作業とは区別されます。

はつりの歴史と語源

「はつり」の語源を辿ると、漢字の「斫」に行き着きます。この漢字は古くから斧で叩き切る様子を表す言葉として使われてきました。建設業界では、材質を問わず表面を削る作業全般に「はつり」という言葉と「斫」の漢字が用いられることが一般的です。

しかし、「はつり」を意味する漢字としては「削」が正式であり、「斫」は本来「きる」という訓読みしか持たないため、建設業界における「斫」の定着には疑問の声も上がります。

興味深いのは、はつり作業を行う職人たちが古くから「䂨」という漢字を好んで使用していたことです。「石」を偏に「斥」を旁としたこの漢字は、「石（のように硬いもの）を斥（しりぞ）ける」という意味を表す、独自の造字であると考えられています。

このようにして、「䂨り」から「斫り」へと変化し、石材や建設業界を中心に広まりました。現在では一般にも広く知られていますが、漢和辞典などでは正式な表記としては認められていないのが現状です。

はつり工と作業工程

はつり作業を専門に行う職人を「はつり工」または「はつり屋」と呼びます。多くは解体工事も兼務しますが、大規模な解体工事を行う会社とは区別されます。

はつり工は、エアピックハンマーやエアブレーカーなどの空圧工具や電動工具を用いてコンクリートを破砕します。使用した工具の鑿は、磨耗したら自ら鍛造して再利用するなど、高度な技術が求められます。特に、頑丈な無筋コンクリートや転石の撤去には、鑿岩機やせり矢を用いることもあります。

はつりの需要と現状

はつり工事の需要は、鉄筋コンクリート造建物の改修工事において特に大きいです。既存の壁に開口部を設ける場合などはもちろん、内装材の改装でも硬質部分の除去が必要な場合ははつり工事が不可欠です。

新築工事でもコンクリートを使用する場合は、はつりが必要になるケースがあります。施工管理や型枠工事の不具合を指摘する声もありますが、杭基礎の処理や、施工上の便宜を図るための意図的なはつりなど、様々な理由で必要とされています。

戦後、一般的なコンクリート解体手法であったハンドブレーカ工法は、大型機械や低騒音化機器の導入により衰退傾向にありましたが、近年、建築物の耐震補強やインフラの老朽化対策に伴う修繕工事の増加により、再び需要が高まっています。これらの工事には、局所的で手作業が必要なはつり工事が不可欠だからです。

まとめ

「はつり」は、一見単純な作業に見えますが、その歴史や技術には奥深さがあります。現代社会においても、建築物の維持管理や改修に欠かせない重要な技術であり、今後も需要が拡大していくことが予想されます。

もう一度検索