断ち物

断ち物（たちもの）について

断ち物や物断ちとは、神仏に願掛けを行う際に好きな飲食物や趣味を一時的に絶つことを指します。これによって、自らの意思を強くし、願いをより確実に実現しようとする民間信仰の一種です。現代では特に受験生が集中力を高めるために利用し、漫画やゲームなどを絶つケースも多く見られます。

断ち物の歴史と実践

日本における断ち物の歴史は古く、紀元後の『魏志倭人伝』にも記載があり、仏教の影響を受ける前から存在していたことがわかっています。最古の記録は、『蔭凉軒日録』に見られる1491年の「断物」という文字です。初めは清めの信仰として、酒、煙草、茶などを絶つことが主な目的でしたが、次第に個々人の好みが含まれるようになりました。例えば、酒や煙草だけでなく、特定のお菓子や趣味を断つこともあります。

有名な例に、上杉謙信の「女断ち」と春日局の「薬絶ち」があります。上杉謙信は、武人の守護神である毘沙門天を信仰し、一生涯にわたり女性との交渉を持たないという誓いを立てたと言われています。一方、春日局は、徳川家光の乳母として彼の病気を治すために医薬を断ち、彼の最期に至るまで治療を拒否しました。

断ち物の現代的な実践

現代でも多くの著名人が断ち物を実践しています。例えば、歌舞伎俳優の市川團十郎は、父親が江戸追放にされた際に茶断ちを決意し、特定の神社に通っていました。また、片岡我童も愛人との別れを受けて生涯の茶断ちを誓い、古今亭志ん朝は鰻を断つことで、信心を深めた経験を語っています。俳優の渥美清は、苦境を乗り越えるため、仕事の成功と引き換えに禁煙を選択しました。

断ち物の例

• - 煙草断ち: 車田正美や新浦壽夫は、特に親の病気や自分の成長を願い、禁煙を実践しました。
• - 髭剃り断ち: 山内孝徳は、勝利を近づけるために髭剃りを控えました。
• - 米断ち: アーティストのGACKTも自身の意思で食事制限を行っているとされています。
• - メンバーによる禁欲: バンド「キャプテンストライダム」は、ライブ前に好物を禁じることで成功を祈願しました。

関連する信仰

日本には、願掛けや禁忌に関するさまざまな神社や信仰が存在します。来宮神社や八巻神社、早吸日女神社などがその一例です。それぞれの神社では、酒や茶、さらには特定の食材を絶つことで願いを込める行事が行われています。また、断食、デトックス、ハンガー・ストライキとも関連付けられることがあります。

このように、断ち物は日本の文化や信仰に深く根ざしており、現代の人々にも多くの影響を与えています。自らの意思を強くするために、信仰や願掛けを通じて行動する姿勢は、今も多くの人々にとって重要な意味を持っています。

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