新グレート・ゲーム

新グレートゲーム：21世紀における中央アジアのエネルギー争奪戦

「新グレートゲーム」とは、中央アジアの豊富な石油・天然ガス資源を巡り、複数の国々が繰り広げる激しい競争の比喩表現です。19世紀の「グレートゲーム」でイギリスとロシアが覇権を争った歴史的経緯を引き継ぎつつ、現代ではアメリカ、中国、ロシア、インド、日本、韓国、欧州諸国など、多くの国々が複雑に絡み合った関係を築いています。

歴史的背景：

この競争の端緒は、1979年のソ連のアフガニスタン侵攻にまで遡ります。アメリカはソ連に対抗するためアフガニスタン反政府勢力への支援を行い、その後、中央アジアへの関与を深めていきました。ソ連崩壊後、中央アジア諸国が独立すると、各国の思惑が複雑に交錯するようになりました。

主要プレイヤー：

新グレートゲームの主要プレイヤーは、アメリカ、中国、ロシアなどの超大国です。これらの国々は、中央アジアのパイプライン建設を通じてエネルギー資源の安定供給を確保しようとしのぎを削っています。一方で、イラン、トルコ、パキスタン、サウジアラビアといった地域大国も、それぞれの国家利益を追求しつつ、この競争に参入しています。

ゲームの展開：

新グレートゲームは、大きく3つの時期に分けられます。

第1期（第二次世界大戦末期～冷戦終結）： ソ連の勢力圏争いを背景とした東西冷戦構造の中で、アメリカとソ連が影響力を競いました。
第2期（中央アジア諸国の独立～2000年代初頭）： 中央アジア諸国が独立し、民主化や外国投資の促進が図られる一方、地域内紛争やテロリズムが深刻な問題となりました。
第3期（2005年～現在）： 中央アジア諸国がアメリカや欧州諸国への不信感を強め、中国やロシアとの関係を強化する動きが顕著になっています。

中央アジア諸国の対応：

中央アジア諸国は、大国間の競争に巻き込まれながらも、独自の外交戦略を展開しています。例えば、カザフスタンはイスラエルや欧州諸国との関係強化を図り、経済発展を促進。キルギスは、ロシアとアメリカ双方との関係を維持しつつバランスを取ろうとしています。ウズベキスタンは、アメリカとの関係悪化後、中国やロシアとの連携を深めました。タジキスタンは、ロシア、中国、インドなど複数の国との関係を維持し、多角的な外交政策を取っています。トルクメニスタンは中立政策を堅持し、独自路線を歩んでいます。

具体的な事例：

キルギス： チューリップ革命後、ロシアとの関係強化を図り、アメリカからの支援は減少しました。
ウズベキスタン： アンディジャン事件後、欧州連合から制裁を受け、アメリカ軍基地を撤退させ、ロシアとの関係を強化しました。
カザフスタン： イスラエルとの関係強化、欧州へのエネルギー供給拡大、韓国との経済協力などを推進しています。
タジキスタン： ロシア、中国、インドなどとの軍事協力や経済協力を通じて、安定化を目指しています。
トルクメニスタン： 中立政策を堅持し、独自のエネルギー輸出戦略を追求しています。

今後の展望：

新グレートゲームは、エネルギー資源の争奪にとどまらず、地政学的影響力の拡大、テロリズム対策、民主化など、様々な要素が絡み合った複雑な問題です。今後、中央アジア諸国の自立性、大国間の関係変化、エネルギー需要の変動などによって、その様相は大きく変化していく可能性があります。それぞれの国が、自国の利益と地域の安定をどのように両立させていくかが問われています。

参考文献

Lutz Kleveman. The New Great Game: Blood and Oil in Central Asia, Grove Press, 2004, ISBN 0-8021-4172-2
Ahmed Rashid. Jihad: The Rise of Militant Islam in Central Asia, Yale University, 2002, ISBN 0-300-09345-4

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