新学力観

新学力観とは

新学力観は、1980年代後半に提起された、従来の学力観を刷新しようとする考え方です。具体的には、1987年の教育課程審議会答申や臨時教育審議会答申でその必要性が示され、1989年の学習指導要領改定で正式に採用されました。

従来の学力観からの転換

それまでの学力観は、知識や技能の習得に重点が置かれていました。新学力観は、この偏りを是正し、学習過程そのものや、変化への対応力を育むことを目指しました。つまり、単に知識を詰め込むのではなく、自ら考え、問題を解決する能力、そして変化の激しい社会に対応できる力を重視したのです。

新学力観の具体的な内容

新学力観では、以下の点が重視されました。

思考力・問題解決能力: 知識を活用し、論理的に考え、問題を解決する力を養う。
個性重視: 一人ひとりの個性を尊重し、それぞれの興味や関心に応じた学習を支援する。
体験学習・問題解決学習: 座学だけでなく、体験を通して学びを深めたり、現実の課題に取り組む中で学ぶ機会を増やす。
評価の多面化: 知識だけでなく、学習への関心、意欲、態度なども評価の対象とする。
教師の役割の変化: 教師は知識を一方的に教えるのではなく、生徒の学びを支援・援助する役割を担う。

社会的背景

新学力観が提唱された背景には、社会の急激な変化がありました。社会が目まぐるしく変化する中で、かつて学んだ知識や技能はすぐに陳腐化してしまいます。そのため、変化に柔軟に対応できる能力が求められるようになったのです。

新学力観への批判

一方で、新学力観に対しては批判的な意見もあります。主な批判としては、

基礎学力軽視: 思考力などを重視するあまり、基礎的な知識や技能の習得がおろそかになっている。
学力低下: その結果、学力低下を招いているのではないか。
評価の困難さ: 関心、意欲、態度といった定性的な要素の評価は客観性がなく、表面的な行動（授業中の挙手回数など）で評価されることで、新たな歪みを生んでいる。

などが挙げられます。

PISA調査との関連

OECDが行うPISA（生徒の学習到達度調査）は、学力低下論の根拠の一つとして引用されることが多いのですが、教育学者の藤田英典氏は、PISAの出題傾向は、むしろ新学力観が目指す学力に近いと指摘しています。つまり、知識の暗記だけでなく、知識を応用する力、自ら課題を見つけて解決する力を測っているという点において、PISAは新学力観と共通する視点を持っていると言えます。

結論

新学力観は、社会の変化に対応できる人材を育成するために、従来の学力観を刷新しようとしたものです。しかし、その理念とは裏腹に、基礎学力軽視や評価の偏りなど、課題も多く残されています。新学力観の理念を理解しつつ、課題を克服していくことが、今後の教育にとって重要となるでしょう。

関連事項

* ゆとり[[教育]]

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