新安塩田奴隷労働事件

新安塩田奴隷労働事件

新安塩田奴隷労働事件は、2014年2月6日に明らかになった韓国の全羅南道新安郡新衣面、新衣島における知的障害者に対する無賃労働を強いた深刻な人身売買事件です。この事件は、100人以上の障害者が人身売買業者により奴隷として扱われていたことが発覚したもので、韓国社会における障害者差別の根強さを浮き彫りにしました。

事件の背景には、家出人や知的障害者が「食事も十分に提供される」といった言葉に騙され、違法な業者に誘拐されるという状況がありました。これらの業者は、被害者を全羅南道の塩田業者に売却し、簡単に言えば、10万ウォンから30万ウォン（当時の日本円で約9300～28000円）といった安価な価格で取引していました。実際、被害者の中にはソウル駅でホームレスをしていたところを誘われた者もいました。

新衣島の塩田は、韓国での高級天日塩の多くを生産しており、これがブランドとしても知られていました。だが、その裏側では、知的障害者の労働者が監禁され、彼らには一切の賃金が支払われず、劣悪な環境の中で生活を強いられていました。わずかな睡眠時間を与えられ、粗末な食事が提供される状況の中で、働かざるを得ない状況に追い込まれていました。

逃げようとした者は、厳しい暴力にさらされ、記録によれば、スコップや鉄パイプでのリンチを受けることもありました。その中には、骨折治療を受けられずに片足を切断されたまま労働を強いられるケースも含まれていました。この非人道的な状況に対して、地元警察は黙認し、逃げた被害者を事業主に通報するなどの行動が見受けられました。結果として、被害者数は100人以上に及び、彼らは「ここで働かざるを得ない」と思い込むように洗脳されていくのでした。

事件が発覚したのは、ある被害者が理髪店から実家に手紙を送ったことをきっかけとしています。2014年2月6日、ソウル警察がこの塩田の奴隷たちを発見し、保護しました。その後、韓国警察庁は事件発覚から9日後、塩田業者と木浦警察署との癒着疑惑について捜査を開始しました。

事件の調査では、未払い賃金の総額が12億ウォン（約1億1160万円）に達していることが明らかにされ、さらに経営者は被害者への隠蔽工作を指示していたことも判明しました。韓国の当時の大統領である朴槿恵もこの事件を「21世紀にあり得ない衝撃的事件」と位置づけ、徹底した再発防止策を指示しました。

事件を基にしたフィクション映画『奴隷の島、消えた人々』も製作され、2016年には他の事件である新安郡の離島で起こった女性教師への集団強姦事件が、再び地域への批判を呼び起こしました。これらの事件は、韓国における障害者への偏見や差別、社会の闇を強く印象づけるものとなりました。

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