新家憲

新家 憲氏（あらや けん、1939年2月 - 2023年6月25日）は、日本の学術界において、農学および工学の分野で顕著な業績を残した研究者です。北海道札幌市出身で、専修大学名誉教授や専修大学北海道短期大学の学長を歴任しました。また、北海道大学より農学博士、東京電機大学より工学博士の学位を取得しています。

学歴と初期キャリア

新家氏は1962年に北海道大学農学部農業工学科を卒業後、エンジニアとしてのキャリアをスタートさせました。同年、三菱重工業京都製作所にてエンジン設計部門に勤務。その後、1969年には本田技術研究所汎用開発課のエンジン設計部門に移籍し、民間企業で実務経験を積みました。これらの経験は、後の農業機械や環境工学に関する研究に生かされました。

教育・研究者としての歩み

1971年、専修大学美唄農工短期大学農業機械科の講師として大学教育の世界に入りました。翌年には同助教授に昇任し、教育者・研究者としての地歩を固めます。1980年には専修大学北海道短期大学農業機械科の教授となり、長年にわたり同学で教鞭をとりました。

大学における研究体制の構築にも尽力し、1987年には専修大学北海道短期大学環境科学研究所の教授に就任し、後に同研究所の所長を務めました。この期間、環境科学に関する研究を積極的に推進しました。

学位と専門分野

新家氏は、異なる分野で二つの博士号を取得しています。1982年、北海道大学から農学博士の学位を授与されました。その際の学位論文の題目は「流体圧送による土壌層の破壊に関する研究」であり、農業機械による土壌の物理的な操作機構に関する深い洞察を示しました。

さらに1991年には、東京電機大学から工学博士の学位を取得。学位論文の題目は「ヒマワリ油を燃料とするディーゼル機関の始動性の解析」で、これは代替燃料の実用化に向けた工学的なアプローチを示しており、応用研究への関心の高さがうかがえます。

新家氏の専門分野は、環境影響評価・環境政策学、機械力学・制御、農業環境工学・農業工学、農業機械と非常に幅広く、文理を融合したアプローチを特徴としていました。特に国際的な活動として注目されるのが、中国政府からの要請を受けて取り組んだアルカリ土壌改良に関する研究です。これは、広大なアルカリ性不毛地帯を農業利用可能な土地へと転換させる重要な課題であり、その解決に向けた新家氏の貢献は高く評価されています。

要職と受賞歴

長年の教育・研究における功績が認められ、2005年には専修大学名誉教授の称号を授与されました。また、2008年には専修大学北海道短期大学の学長に就任し、大学運営の舵取りを担いました。学校法人専修大学の理事としても大学全体の発展に寄与しました。2010年に専修大学北海道短期大学を退職しました。

その研究活動は、国内のみならず海外、特に中国で高く評価されました。1996年に農業機械学会学術賞を受賞。同年にはFriendship Award（友誼賞）を受賞したのを皮切りに、中国政府や関連機関から多くの栄誉を受けています。1998年にはGreat Wall Award（長城賞）、2004年にはFriendship Award（燕趙友誼賞）を受賞しており、これは中国におけるアルカリ土壌改良研究など、共同研究を通じた国際貢献が高く評価された証と言えます。

主な研究成果

新家氏の研究成果は、多くの学術論文として発表されています。代表的なものとしては、農業機械学会誌に掲載された土壌層の破壊に関する一連の研究論文や、流体を噴出するサブソイラの最適形状に関する共同執筆論文、そして、環境科学研究所報告にまとめられた中国での白漿土改良に関する研究報告などが挙げられます。これらの論文は、農業工学や環境科学分野における貴重な知見を提供し、後進の研究者たちに影響を与えました。

新家憲氏は、教育者、研究者、そして大学運営者として多角的な貢献を果たし、特に農業工学と環境科学分野における研究、および中国との国際的な共同研究において重要な足跡を残しました。

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