新宿パンチ

城定秀夫が監督を務め、2018年 12月1日に劇場公開された日本映画。活気あふれる一方で様々な思惑が渦巻く新宿・歌舞伎町を舞台に、スカウトマンの世界で一旗揚げようとする一人の青年と、彼を取り巻く人々が織りなす人間ドラマが描かれます。

概要

2018年、路上でのスカウト行為に対する規制が強化された直後の新宿・歌舞伎町を舞台に、夢と野心を抱く若者たちが繰り広げる熾烈なスカウト合戦、そして主人公の成長譚が展開される青春映画です。主演は、2.5次元舞台を中心に活躍する小澤廉。純粋でどこか不器用な主人公、道場方正を演じ、都会の洗礼を受けながら奮闘します。共演には実力派の毎熊克哉と宮崎秋人が名を連ね、物語に深みを与えています。ヒロインは吉倉あおいが務め、主人公が出会う重要な存在として登場。さらに、スカウト会社の重役を演じる鈴木隆仁と矢柴俊博が脇を固め、歌舞伎町の裏社会の一端をリアルに描き出しています。

ストーリー

物語の始まりは、日本の片隅にある田舎町。都会への強い憧れを胸に、主人公である22歳の童貞青年、道場方正（小澤廉）が東京へと旅立ちます。彼は父親から借りた一張羅に身を包み、期待に胸を膨らませていましたが、最初に訪れた両親の思い出の場所であるテレクラは既に廃業しており、歌舞伎町の華やかなネオンと現実の厳しさとのギャップに打ちのめされます。

意気消沈する方正でしたが、偶然立ち寄ったバッティングセンターで、驚くほど見事なスイングを見せる一人の女性と出会います。彼女はガールズバーで働く糸田ルミ（吉倉あおい）と名乗る女性で、この偶然の出会いが、方正を歌舞伎町の裏社会における様々なトラブルへと巻き込んでいくきっかけとなります。純粋な青年が、欲望が渦巻く街の光と影に触れ、もがきながらも成長していく過程が描かれます。

登場人物

道場方正（演：小澤廉）
物語の中心人物。田舎から上京してきた22歳の青年で、天然パーマのため周囲からは「パンチ」と呼ばれます。新宿に憧れを抱き、スカウトマンの世界に足を踏み入れますが、根っからの女好きにもかかわらず女性には全く相手にされず、いまだ童貞。上京してすぐにルミに一目惚れします。その髪型から不良や裏稼業の人間と間違われることも少なくありません。

糸田ルミ（演：吉倉あおい）
多額の借金を抱えるキャバクラ嬢。借金返済のため、元恋人の高岡の勧めでガールズバー「ヒロミ」で働くことになりますが、店内の悪質な環境（ドラッグ蔓延など）に耐えきれず逃亡します。趣味はバッティングセンター通い。風俗の世界には足を踏み入れず、貞操観念は固いです。

高岡タカシ（演：毎熊克哉）
ルミの元恋人。かつてはスカウト業に携わっていましたが、規制強化により方向転換。現在は脱法ドラッグ販売や他店からの引き抜きといった事業を手がけています。DV癖があり、特に鼻血を出させない巧みな平手打ちが得意技という暴力的な一面を持ちます。

設楽玄（演：宮崎秋人）
方正が所属するスカウト会社「ドラグーン」の先輩スカウト。方正にスカウトとしての基本や裏技を教えますが、彼自身も厳しいノルマ達成に苦悩しています。ギャンブラー気質でもあります。

露崎守（演：矢柴俊博）
スカウト会社「ドラグーン」を率いる代表。スカウトという仕事に強い誇りを持ち、スカウトした女性たちのその後のケアを非常に重視しています。新宿の表と裏を知るにはドラグーンが最適だと考え、方正を会社に迎え入れた人物です。裏社会の組織「黒星会」とも繋がりがあります。声が小さいのが特徴です。

矢倉巻（演：鈴木隆仁）
「ドラグーン」の幹部の一人。主に威嚇や恫喝といった強硬な手段を得意としています。

* さちこ（演：財田ありさ）
純粋で世間知らずな地方出身の女性。方正にスカウトされてキャバクラで働き始めますが、歌舞伎町の闇に引きずり込まれ、次第に薬物に溺れていきます。エンディングでは、方正へのメールを通じて、露崎の助けで病院に入院できたことが語られます。

スタッフ

本作は、監督・編集・効果・選曲を城定秀夫が兼任しています。製作は永森裕二、久保和明。脚本は永森裕二と城定秀夫が共同で執筆。撮影は田宮健彦、音楽は林魏堂が担当するなど、城定組を支えるスタッフが集結して制作されました。

新宿のリアルな情景と、そこで生きる人々の剥き出しの感情を描いた本作は、主人公の視点を通して、大都会の片隅に息づく光と影を映し出しています。欲望、挫折、そしてわずかな希望が交錯する青春群像劇として、観る者に強い印象を残す作品となっています。

©2018「新宿パンチ」製作委員会

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