新撰八道地理志

新撰八道地理志とは

『新撰八道地理志』（しんせん はちどう ちりし）は、朝鮮王朝の世宗14年（1432年）に編纂された地理書です。この作品は、朝鮮王朝で最初に政府によって作られた地理誌であり、その後の官撰地理誌の先駆けとなりました。しかし、残念なことに現存していません。

編纂の背景

この地理誌の編纂は、1424年に世宗が大提学の卞季良に命じたことから始まります。彼は朝鮮全土の地理情報と各州府、郡、県の歴史をまとめるように指示しました。全国の各道に対して情報収集を命じ、蓄積された資料をもとに、特定の規定に従って記録が整理され、春秋館へ送付されました。このプロジェクトは、春秋館が中心となり、複数の編纂委員によって進行され、最終的に『新撰八道地理志』が世宗に呈上されました。

特に、孟思誠、権軫、尹淮、申檣といった著名な学者たちがこの大プロジェクトの完遂に貢献しました。その後、この地理志は改良され、最終的には『世宗実録地理志』となったと考えられています。

現存しない資料と影響

『新撰八道地理志』は、実物が発見されていないため、その詳細は不明ですが、全国各道で集められた地理的情報が基礎となって作成されました。これらの地方別地理誌は、それぞれに保存されていましたが、壬辰倭乱や丁酉再乱（文禄・慶長の役）によって多くが失われてしまいました。その中でも、1425年に作成された『慶尚道地理志』の副本だけが奇跡的に焼失を免れました。この副本は、当時の地理志の概要を知る手がかりとなります。

『新撰八道地理志』の全容は、部分的に『慶尚道地理志』の記述から推測可能であり、この作品がその後の地理志に与えた影響は計り知れません。日本統治時代を経て、朝鮮の地理や社会経済についての理解を得る手段としても、その価値は色褪せていません。

その後の編纂

1454年（端宗2年）には、『世宗実録』が編纂される際に、『新撰八道地理志』を附録として載せる企画が持ち上がりましたが、その内容は時間の経過とともに、一部の変更や増減があったため、完全に同じではありませんでした。それでも、『新撰八道地理志』は後の『世宗実録』地理志の底本となり、その後の官撰地理志の手本となる重要な役割を果たしました。

結論

最終的に、『慶尚道地理志』などの各地方別地理志が『新撰八道地理志』の基盤となり、その知識は『世宗実録』地理志に引き継がれることで、朝鮮王朝の地理に関する理解を深めるための貴重な資料となりました。この歴史的な地理書の影響は、多くの歴史家や地理学者に評価され続けています。

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