新旧恋の三段返し

新旧恋の三段返し：失われたフィルムと輝けるキャスト

1927年、アメリカ合衆国で製作されたサイレントコメディ映画『新旧恋の三段返し』（原題：Cradle Snatchers）は、現在では幻の傑作と言えるでしょう。ハワード・ホークス監督という、後のハリウッド黄金期を代表する巨匠の手による作品であるにもかかわらず、フィルムの多くが失われており、その全貌を知る者は少ないのです。

本作は、1925年にラッセル・G・メドクラフトとノーマ・ミッチェルによって書かれた舞台劇を映画化したもの。当時としては斬新な、時代を先取りした恋愛模様が描かれていると推測されます。舞台劇の成功を背景に、豪華キャストが集結しました。メアリー・ボーランド、エドナ・メイ・オリヴァー、そして後の映画史に名を残すハンフリー・ボガートといった面々が名を連ねています。ボガートはこの作品でまだ無名でしたが、彼の才能の片鱗が垣間見えたかもしれません。

しかし、この貴重な作品は、時間の経過と共にその姿を失いつつあります。全7巻からなるフィルムのうち、3巻の一部と4巻は既に紛失。残りはアメリカ議会図書館に保管されていますが、その状態も決して良好とは言い難いでしょう。貴重な映像資料は、劣化や損傷の危険に常にさらされているのです。

残されたフィルムからは、当時の衣装や美術、そして俳優たちの演技の巧みさなどが垣間見えるに違いありません。サイレント映画特有の表現技法や、コメディとしてのテンポの良さも、研究者や映画愛好家にとって貴重な資料となるでしょう。

キャスト陣にも注目です。ルイーズ・ファゼンダ、エセル・ウェルス、ドロシー・フィリップスといった、当時人気を博した女優陣に加え、J・ファレル・マクドナルド、フランクリン・パングボーン、ウィリアム・B・デヴィッドソン、ジョセフ・ストライカー、ニック・スチュアート、アーサー・レイク、ダイアン・エリス、サミー・コーエン、タイラー・ブルックといった俳優たちが脇を固めています。さらに、クレジットなしながらもヴァージニア・ブッシュマン、サリー・アイラース、サリー・フィップスといった俳優も参加していたとされ、当時のハリウッドの活況を物語っています。

興味深いことに、『新旧恋の三段返し』は1929年に『Why Leave Home?』というタイトルでリメイクされています。このリメイク版がどのような内容で、オリジナル作品とどのように異なっているのかを知ることは、本作をより深く理解するための重要な手がかりとなるでしょう。残念ながら、リメイク版についても詳細な情報は少ないのが現状です。

『新旧恋の三段返し』は、現存するフィルムの少なさから、その全貌を知ることは困難です。しかし、残された断片から、当時のハリウッド映画界の雰囲気や、優れた才能を持つ俳優や監督たちの存在を感じ取ることができます。この作品は、失われた映画の歴史の一端を示す貴重な証であり、これからも研究や保存の努力が続けられるべきでしょう。 この映画を巡る謎解きは、映画史研究家にとって、大きな課題であり、同時に大きな魅力となっているのです。

もう一度検索