新月 (掲示板)

新月（しんげつ）について

新月は、日本で開発されたP2P（ピアツーピア）型の匿名掲示板で、その開発は新月プロジェクトによってオープンソースで進められています。伝統的な掲示板が特定の管理者によって運営されるのに対し、新月はその管理を分散させることで、より自由な情報交流を促進しています。

背景と目的

インターネット掲示板の中には、管理者が存在することで運営が成り立っているものがあります。しかし、管理者の不在や故障により、掲示板が利用できなくなるリスクがあります。このような事態を避けるために、管理者が不要なP2P型掲示板のアイデアが生まれ、複数のプロジェクトが立ち上げられました。その中の一つが新月です。

新月の特徴

新月は、P2P技術を活用しており、掲示板のデータが複数のユーザーのPCに分散して保存されています。このシステムの最大のメリットは、特定のサーバーに依存しないため、DDoS攻撃やアクセス集中が発生しても、少なくとも1つのノードが生き残っていれば掲示板にアクセスできる点です。これにより、いわゆる「鯖落ち」を防ぎます。さらに、アクセス規制や乗っ取り、書き込み制限も起こりにくくなります。

利用者は、自分の閲覧する内容を自分で管理できます。JavaScriptやCSSを用いて掲示板の機能やデザインをカスタマイズすることも可能です。掲示板内での書き込みに対する削除の是非は、各ノードの管理者に委ねられており、個々の管理者が自分の判断で行動します。また、情報は各ノードにキャッシュされるため、一度投稿された情報は完全にネット上から消失させることが難しく、情報の流通と持続性が確保されます。

新月では、画像やファイルの添付が可能で、画像にはサムネイルが表示されます。一般的な掲示板で見られる「板」に相当する機能はないものの、スレッドを分類するためのタグ機能が導入されています。このタグは自由に変更できるため、複数のタグを付けることも許可されています。さらに、スレッドごとに容量の制限は設けられておらず、実質的にはパソコンのハードディスク容量が上限となります。

他にも、新月は全文検索機能を備え、携帯電話用のページも提供しています。また、有志の手によって新月ネットワークのモニタリングサイトも整備されており、運用状況を確認することができます。

ソフトウェアの実装

新月プロトコルを実装したソフトウェアはいくつか存在しますが、通常は「朔（saku）」が使用されます。これはPythonで開発されたもので、クロスプラットフォーム対応の共通版とWindows専用版があります。このソフトウェアにはBSDライセンスが適用されています。他にも、Windows用の専用ブラウザ「Hoven」や、Delphiで開発された「NanaSHI」、Javaで実装された「Selene」がありますが、これらはいずれも開発が停止しています。

匿名性

新月では、一般的なユーザー同士の間で高いレベルの匿名性が保たれています。しかし、ログが残るため、法律機関による捜査が入れば特定される可能性もゼロではありません。この点に留意する必要があります。

プロトコル

新月では、HTTPのGETメソッドを用いたプロトコルが採用されています。書き込みが行われると、その情報が隣接ノードに通知され、ノード間で情報が共有されます。このプロセスが繰り返されることで、ネットワーク全体が同期されます。また、定期的に他のノードから未取得の書き込みを検索し、取り込むことも行われています。

新月は、攻撃や規制に強い新しい掲示板の形を模索するプラットフォームとして、現代のインターネットにおける匿名性と自由な情報交換の手段を提供していると言えるでしょう。

もう一度検索