新本格魔法少女りすか

『新本格魔法少女りすか』は、西尾維新による日本のライトノベルで、イラストを西村キヌが担当しています。講談社ノベルスから2004年から2020年まで刊行されました。

作品概要

この物語は、魔法が存在する日本を舞台に、魔法を使えない普通の少年・供犠創貴と、魔法使いの少女・水倉りすかの2人が、りすかの父親である水倉神檎を追う中で繰り広げられる戦いと冒険を描いています。

特徴

魔法少女×推理小説: 魔法少女ものに推理小説の要素を加えた独特な作風が特徴です。
クトゥルフ神話の引用: 架空の神話体系である「クトゥルフ神話」からの引用が、魔法の嘘っぽさを緩和する装置として用いられています。
緻密な設定: 魔法は「使用者の精神を外側に向けて放出する行為」とされ、「属性」「種類」「顕現」といった要素で説明されています。
舞台: 主に九州の佐賀県が舞台。魔法の国・長崎県とは城門で隔てられています。
魔法の制限: 魔法使いは海を渡ることができず、弱い者は川や湖も越えられないという設定があります。

設定

魔法使い: 長崎県に住み、魔法と呼ばれる異能力を使う。
魔法: 「使用者の精神を外側に向けて放出する行為」と定義。
魔法式: 呪文の詠唱時間を短縮する技術。術者が近くにいる必要あり。
魔法陣: 特定の条件で発動する「陣」。術者が近くにいる必要なし。

あらすじ

第1巻

時間操作の魔法を使う魔法使い・水倉りすかと、彼女に戦闘指示を行う供犠創貴。2人は佐賀県を拠点に、姿を消した神檎を捜し、「魔法狩り」をしています。りすかの血液には特殊な仕掛けがあり、出血すれば魔法を簡単に使え、大量の出血で一時的に強力な姿に変身できます。りすかの従兄・水倉破記が現れ、りすかを長崎に連れ戻そうとしますが、りすかは佐賀に残ることを選びます。

第2巻

神檎の手がかりを求めていた創貴とりすかは、魔法使いのツナギと出会い、協力して「六人の魔法使い」の1人である人飼無縁を倒します。その後、3人は残りの「六人の魔法使い」に接触するため旅立ちます。

第3巻

「六人の魔法使い」の1人、地球木霙を倒した後、創貴は「魔法封じ」の水倉鍵から、神檎の計画である「箱舟計画」について知らされます。これは、りすかの時間操作の魔法で過去に戻ることで、海を渡れない魔法使いのために大陸を一つにするというものでした。創貴は鍵の誘いを断り、りすかは過去に戻る魔法を使って窮地を脱出。その後、創貴は「平行世界」に飛ばされるが、両親に助けられ元の世界に戻ります。

第4巻

創貴とツナギは「六人の魔法使い」の結島愛媛によって磔にされ、りすかは行動を封じられます。創貴は時間を稼ぎ、りすかの出血で17年後の姿に変身し勝利。しかし、元の姿に戻れなくなり、再び破記が現れます。

登場人物

水倉神檎を追う者たち

供犠創貴: 主人公。小学5年生。目的のためには手段を選ばない。「魔法使い」使いとしてりすかと行動。
水倉りすか: メインヒロイン。時間操作の魔法を使う魔法使い。特殊な血を持つ。「赤き時の魔女」の称号を持つ。
ツナギ: 元人間の少女。「肉」の魔法を使い、魔力を分解する能力を持つ。りすかたちの小学校に転校してくる。

水倉神檎と六人の魔法使い

水倉神檎: りすかの父親で、あらゆる魔法を使える万能の魔法使い。「箱舟計画」を企てている。
人飼無縁: 「魔眼」の使い手。目を合わせた相手を殺すことができる。
地球木霙: 自己の体を自在に改造・再生できる。
蠅村召香: 対象を「固定」する魔法を使う。
塔キリヤ: 対象者を「平行世界」に引き込むことができる。
結島愛媛: 炭素で杭を作り出す魔法を使う。
水倉鍵: 「魔法封じ」の能力を持つ人間。魔法使いではない。

その他

チェンバリン: りすかの従僕。コーヒーショップを経営。
在賀織絵: りすかのクラス委員長。才女。
水倉破記: りすかの従兄。運命干渉系の魔法使い。
供犠創嗣: 創貴の父親。刑事。
折口きずな: 創貴の4番目の母親。勘が鋭い魔法使い。

作風

本作は、魔法少女ものに推理小説の要素を加えた作品で、バトル要素も含まれます。魔法は「何でもできる力」ではなく「固有の得意技」に近いもので、主人公たちは敵の魔法の弱点を探りながら戦います。魔法少女ものの基本要素を少しひねくれさせて展開する「王道を逆立ちして行く」作風が特徴です。

制作背景

本作は、講談社の編集者である太田克史が魔女っ子もののメディアミックスを企画したことがきっかけで誕生しました。西尾維新は「魔女っ子探偵」というキーワードを基に執筆を開始し、クトゥルフ神話の要素を取り入れたことで、独特な世界観が生まれました。また、タイトルに「新本格」という言葉を加えたのは、「新世紀エヴァンゲリオン」のような響きを持たせるためでした。

執筆中断と再開

シリーズは一時中断しましたが、2019年に連載が再開され、2020年に完結しました。中断期間中、西尾維新は執筆に苦労しつつも、他の作品とのクロスオーバーや、自身の心境の変化を経て、再び本作の執筆に臨みました。

メディア展開

PV: 文庫化とシリーズ完結を記念した実写プロモーションビデオが制作されました。
朗読劇: 原作第1巻の朗読劇が上演されました。
漫画: 真島ヒロによる漫画版が発表された後、絵本奈央によるコミカライズ版が連載されました。

既刊一覧

単行本

全4巻

文庫版

全4巻

漫画

全7巻

参考文献

『ユリイカ9月臨時増刊号総特集西尾維新』
『このライトノベルがすごい！2006』
『西尾維新クロニクル』
『ファウスト Vol.7』
* 『ダ・ヴィンチ 2021年1月号』

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