新治国

新治国（にいはりのくに）とは

新治国は、古代日本の律令制が施行される以前に、現在の茨城県西部に存在した国です。大化の改新後、律令制度が整えられてからは常陸国新治郡となりました。この国名は、『古事記』に登場する倭建命（やまとたけるのみこと）の歌に「邇比婆利（にひばり）」として見られます。なお、2006年まで存在した茨城県新治郡（にいはりぐん）は、同名の別の行政区画です。

新治国の領域

『和名類聚抄』によれば、新治国の後身である新治郡には、坂戸郷、竹嶋郷、沼田郷、伊讃郷、博多郷、巡廻郷、月郷、大幡郷、新治郷、下真郷、巨神郷、井田郷の13の郷がありました。新治国もほぼ同様の領域を持っていたと考えられ、現在の茨城県笠間市、筑西市、桜川市がその領域にあたると推定されています。

国造の系譜

『常陸国風土記』には、新治国造の祖として比奈良珠命(ひならすのみこと)の名が見えます。『国造本紀』には、比奈羅布命が国造に任命されたと記されています。後の新治郡の長官である大領（たいりょう）も、新治国造の血を引く新治直（にいはりのあたい）一族が世襲していたと考えられています。

倭建命と新治

『古事記』には、東征を終えた倭建命が、帰路の甲斐国酒折で詠んだ歌に新治が登場します。倭建命が「新治　筑波を過ぎて幾夜か寝つる」と尋ねると、従者が「日々並べて　夜には九夜　日には十日を」と答えたという逸話が残されています。この歌のやり取りが連歌の起源とされ、歌が詠まれた場所は酒折宮と呼ばれるようになりました。

葦間山古墳

葦間山古墳は、筑西市徳持の小貝川左岸に位置する前方後円墳で、別名徳持古墳とも呼ばれます。6世紀前半に築造されたと推定されており、前方部が畑地として利用されたため一部が失われています。後円部には針葉樹が生い茂っています。現存する後円部の直径は82m、高さは10.5m、前方部の全長は30m、高さは3mです。失われた部分を含めると全長141mに達し、新治国造の支配領域では最大規模の古墳です。この古墳の被葬者は、比奈良珠命の系譜を引く国造級の権力者であったと推測されています。

関連事項

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