新潟県立農林専門学校 (旧制)

新潟県立農林専門学校（にいがたけんりつのうりんせんもんがっこう）は、太平洋戦争の終結間際の1945年（昭和20年）に設立された旧制の専門学校である。略称は農専。その起源は、1903年（明治36年）に開校した旧制新潟県立農林学校（現在の新潟県立加茂農林高等学校）を源流とする。

本校は、第二次世界大戦中に国が推進した食糧増産や林業振興など、農産体制の強化を図る目的で設置された農林専門学校の一つであった。本科の修業年限は3年で、農科、林科、農芸化学科の三つの学科が設置された。

母体となった新潟県立加茂農林学校は、もともと4年制の農業学校であったが、早い段階から専門学校への昇格構想を持っていた。しかし、実現には至らなかった。1941年（昭和16年）の本館焼失や、1943年（昭和18年）の中等学校令による年限短縮などが重なり、同窓会による専門学校昇格運動が本格化した。戦争末期になってようやく昇格が認められ、偶然にも加茂農林学校に研究室を疎開させていた東京帝国大学農学部の丹羽鼎三教授が初代校長となった。

1945年2月27日、専門学校令に基づき設立が認可され、同年5月11日に第1回入学式が行われた。創立当初は加茂市にある母体校の校舎内に併設されていたが、併設の加茂農林学校が存続することになったため、校舎を明け渡す必要が生じた。このため、1946年5月、本校は中蒲原郡村松町石曾根（現在の五泉市）にあった旧陸軍兵舎跡地へと移転した。この移転は急であり、学校が持ち出せたのはわずかに事務書類一式のみだったという。

第二次世界大戦後の学制改革の中で、本校も新しい大学制度への移行を目指すことになった。当時、新潟県では県内の高等教育機関を統合した総合大学を設立する構想が進んでおり、本校もこれに参加した。1947年6月には北日本総合大学期成同盟会が結成され、同年11月には、同会において、新制大学の農学部は本校を母体として新潟市に設置するという方針が決定した。これを受けて、1948年3月には東蒲原郡三川村（現在の阿賀町）の国有林を借りて演習林が設置されるなど、新制大学への移行準備が進められた。

1949年5月31日、新制国立新潟大学が発足した。新潟県立農林専門学校は、新設された新潟大学農学部の母体となり、農学科と林学科が置かれた。新制農学部は当初から新潟市内に設置されることが予定され、1949年6月には新潟市河渡地区（現在の新潟市小金町、新潟県立新潟東高等学校の敷地）に新校舎の建設が始まり、1950年4月に村松校地から河渡新校舎へ移転を完了した。

新制大学への移行期には、運営を巡る混乱もあった。1949年6月には、新制農学部の第1回入学試験で不正疑惑が生じ、当時の伊藤武夫校長の排斥運動へと発展した。最終的には、伊藤校長が新潟大学農学部教授に転出し、当時の新潟県副知事であった野坂相如氏が校長事務取扱を務めて事態は収拾された。

旧制専門学校としての新潟県立農林専門学校は、新制大学への移行に伴い、その役割を終え、1951年3月18日の最後の卒業式をもって閉校した。

その教育・研究の精神は、後身である新潟大学農学部に引き継がれた。新潟大学農学部は、その後1974年7月に現在の新潟市西区の五十嵐キャンパスへ移転している。旧村松校地時代に開設された附属農場は、1951年3月に正式に新潟大学農学部に移管され、現在も新潟大学農学部附属フィールド科学教育研究センター耕地生産部村松ステーションとして存続している。

本校の同窓会は「新潟大学農学部同窓会」と称しており、旧制と新制の卒業生が合同の組織となっている。

歴代校長

初代：丹羽 鼎三（1945年2月～1947年3月）
第2代：伊藤 武夫（1947年5月～1949年12月）
* 校長事務取扱：野坂 相如（1949年12月～）

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