新潮エンターテインメント大賞

新潮エンターテインメント大賞（しんちょうエンターテインメントたいしょう）

新潮エンターテインメント大賞は、株式会社新潮社と株式会社フジテレビジョンが共同で主催し、2005年から2012年にかけて実施された公募形式の新人文学賞です。エンターテインメント分野における新たな才能の発掘と育成を目的として設立されました。

この賞の大きな特徴の一つは、募集対象となる作品の多様性です。特定のジャンルに限定されることなく、推理、SF、ファンタジー、歴史、現代ドラマなど、幅広いエンターテインメント小説の長編が応募可能でした。また、選考方法もユニークで、毎年異なる現役の作家が一人で最終選考を担当するという形式が取られていました。これにより、選考委員の個性やその時々の文学的な関心が、受賞作の傾向に反映される側面も持ち合わせていたと言えるでしょう。

新潮エンターテインメント大賞は、それまで新潮社が主催していた「小説新潮長編小説新人賞」の後継となる賞として位置づけられています。設立当初の2005年、第1回および翌2006年の第2回までは、「新潮エンターテインメント新人賞」という名称で実施されました。その後、2007年の第3回からは名称が「新潮エンターテインメント大賞」と改められ、賞の終了までこの名称が用いられました。合計8回にわたり開催された後、2012年の第8回をもって幕を閉じました。

受賞者には、副賞として100万円が授与されました。また、受賞作品は新潮社の発行する小説誌『小説新潮』に作品の一部が掲載（抄録掲載）された後、新潮社より単行本として刊行されるという出版の機会が約束されていました。これは、新人作家にとって大きなデビューへの足がかりとなるものでした。

以下に、本賞の歴代受賞者と受賞作品、そして選考委員を一覧で示します。

第1回（2005年）
受賞者：吉野万理子
受賞作：『秋の大三角』
選考委員：石田衣良
第2回（2006年）
受賞者：榊邦彦
受賞作：『100万分の1の恋人』（応募時タイトル『ミサキへ』を改題）
選考委員：浅田次郎
第3回（2007年）
受賞者：井口ひろみ
受賞作：『月のころはさらなり』
選考委員：宮部みゆき
第4回（2008年）
受賞者：中島桃果子
受賞作：『蝶番』
選考委員：江國香織
第5回（2009年）
受賞者：小島達矢
受賞作：『ベンハムの独楽』
選考委員：荻原浩
第6回（2010年）
受賞者：神田茜
受賞作：『女子芸人』（応募時タイトル『花園のサル』を改題）
選考委員：三浦しをん
第7回（2011年）
受賞者：水沢秋生
受賞作：『ゴールデンラッキービートルの伝説』（応募時タイトル『虹の切れはし』を改題）
選考委員：恩田陸
第8回（2012年）
受賞者：光本正記
受賞作：『紅葉街駅前自殺センター』（応募時タイトル『白い夢』を改題）
選考委員：畠中恵

また、受賞には至らなかったものの、本賞を機に後に活躍する作家も存在します。例えば、第4回（2008年）において応募作『少年鉄人』が最終候補に残った山下貴光氏は、その後『このミステリーがすごい！』大賞を受賞して2009年に作家デビューを果たしました。彼の最終候補作であった『少年鉄人』も、デビュー後に宝島社から刊行され、文庫化にあたって『鉄人探偵団』と改題されています。

短命に終わった賞ではありますが、その開催期間中には、後に文壇で重要な位置を占めることになる新人作家を複数輩出するなど、日本のエンターテインメント文学の発展に一定の貢献を果たした文学賞と言えるでしょう。

本賞に関する詳細な情報や、過去の選評、受賞者の言葉などは、新潮エンターテインメント大賞の公式サイトにて公開されていました。

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