新町支石墓群

新町支石墓群について

新町支石墓群は、福岡県糸島市志摩新町に位置する重要な弥生時代の遺跡です。この墓群は新町遺跡の一部であり、2000年に国の史跡として指定されました。遺跡は、玄界灘に面した糸島半島の南西部にあり、引津湾に接する砂丘上に広がっています。

この遺跡は、九州大学の中山平次郎教授によって、大正時代にから学界に紹介され、多くの研究者に注目されています。周辺には、縄文時代後期の貝塚と、弥生時代の遺跡である御床松原遺跡、中世の土坑墓群なども存在しており、地域の豊かな歴史を物語っています。

1986年には第1次発掘調査が行われ、弥生時代初期から前期前半にかけての墓域が発見されました。その後もさまざまな調査が実施され、この地域の墓群は広がりを見せ、南北約80メートル、東西約140メートルの大きさの墓域が確認されました。

発掘の結果、57基の支石墓および甕棺墓が特定され、そのうち33基は支石墓でした。特に注目されるのは、構造が似ている2基の墓、9号墓と11号墓です。9号墓は約1トンの花崗岩の上石を4つの支石で支えており、内部には長さ180センチメートル、幅65センチメートル、深さ60センチメートルの長方形の墓坑があって、膝を曲げた状態の人骨が発見されています。この埋葬方法からは、木棺が利用されていたと推測されます。

また、墓から出土した副葬品の中には、小壺が含まれ、多くの人骨、特に乳幼児が甕棺に、成人は木棺に埋葬されていたことが明らかとなりました。出土した人骨は、縄文時代の特徴を持つもので、これは当時の人々の生態や文化を考察する手がかりとなります。

特筆すべきは、24号墓から発見された男性の人骨です。この骨には、朝鮮系の形状を持つ磨製石鏃が付いており、戦争の犠牲者とも言われる重要な発見です。このことは、日本列島における初の戦争犠牲者の可能性を示唆しており、歴史的意義が高いとされています。さらに、木棺の下には別の人物の頭部の遺骸が埋まっており、これが戦争に関連する埋葬方法である可能性も考えられます。

新町支石墓群は、弥生文化初期の墓制を知るための重要な遺跡であり、完全に保存された人骨が発見されている点も特筆すべきです。この発見は、九州地方北部における弥生時代の文化的背景や社会的状況を理解する上で極めて重要な資料とされています。

現在では支石墓群の遺構を保護するための観察棟が設けられ、新町遺跡展示館として一般に公開されています。このようにして、訪れる人々に弥生時代の文化や生活様式を知る機会を提供しています。

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