新皇

新皇（しんのう）

新皇とは、平安時代中期の武将・平将門が、天慶2年（939年）に自らを「新しい天皇」と称した際に用いた称号です。この称号は、将門が自身の勢力拡大と支配の正当性を主張するために用いられました。以下に、新皇僭称に至る経緯、その後の動き、そして新皇が任命した官吏について詳しく解説します。

新皇僭称の経緯

平将門は、一族との私的な争いを繰り返し、その過程で常陸国府を襲撃するという公権への挑戦を行いました。この行動が、結果的に朝廷に対する反乱とみなされることになります。将門は、側近の進言を受け、東国での勢力拡大を目指し、下野国府や上野国府を占領しました。上野国府では、四方の警備を固め、諸国の除目（官吏の任命）を発令しました。この時、八幡大菩薩の使いを名乗る巫女が現れ、「将門に天皇の位を授ける」という神託を伝えます。将門はこれを恭しく受け入れ、「新皇」を名乗ることとなりました。この新皇僭称に対し、兄弟や家臣は諫言しましたが、聞き入れられることはありませんでした。

新皇としての活動

新皇を自称した将門は、既存の天皇である朱雀天皇を「本皇」と呼びました。また、藤原忠平に宛てた書状では、自身が桓武天皇の五代の孫であることを主張し、東国を支配する正当性を訴えました。しかし、除目は坂東諸国の国司の任命に留まっており、全国支配を意図したものではなく、東国での支配権を確立しようとしたものと解釈できます。これは、将門が「分国の王」程度の立場を目指していたことを示唆していると考えられます。

新皇が任命した官吏

将門が新皇として任命した主な官吏は以下の通りです。

下野守：平将頼（将門の兄弟）
上野守：多治経明
常陸介：藤原玄茂
上総介：興世王
安房守：文屋好立
相模守：平将文（将門の兄弟）
伊豆守：平将武（将門の兄弟）
下総守：平将為（将門の兄弟）

通常、上総・常陸・上野の3か国は親王が太守として統治する親王任国でしたが、当時は太守が都に留まり、介が長官として派遣されていました。将門が任命した官吏を見ると、上野には守を任命している一方で、常陸と上総には介を任命しており、その意図は不明です。これは、朝廷の慣習を必ずしも踏襲していなかった、あるいは、新皇直轄の官吏という意味合いがあった可能性があります。将門記の記述通り、将門が朝廷に対して二心を持っていなかったことを意味するのかも知れません。

まとめ

平将門の新皇僭称は、東国での独立的な勢力形成を目指した行動であり、当時の朝廷に対する反抗の象徴とも言えます。将門は、自身の家系と神託を根拠に正当性を主張しましたが、その行動は結果的に朝廷との対立を深め、その後の歴史に大きな影響を与えることとなりました。

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