新谷琇紀

新谷琇紀：神戸の街に息づく、愛の彫刻

新谷琇紀（1937年7月26日 - 2006年8月31日）は、日本の代表的な具象彫刻家の一人です。彼は「愛」を生涯のテーマとし、女性像を中心とした、繊細で柔らかな作風で知られています。数多くの作品が神戸市内に設置され、市民に親しまれ、神戸の街並みに独特の風情を与えています。

1937年、兵庫県神戸市に生まれ、父である新谷英夫を師として彫刻の道を歩み始めました。兵庫県立御影高等学校、金沢美術工芸大学卒業後、更なる研鑽を求め、イタリア・ローマへ留学。エミリオ・グレコら巨匠に師事し、高度な技術と芸術性を磨きました。帰国後は神戸女子大学教授として教鞭を執りながら、精力的に創作活動を続けました。

新谷琇紀の彫刻の特徴は、何よりもその「柔らかさ」と「緻密さ」にあります。硬質な素材であるブロンズや石材を用いながら、驚くほど繊細で、生命感あふれる表現を実現しています。女性像を多く手がけていますが、その表情や仕草は実に多様で、見る者に様々な感情を呼び起こします。単なる人物像にとどまらず、それぞれの作品に込められた「愛」というテーマが、静かに、しかし力強く訴えかけてきます。

彼の作品は、神戸市内を中心に、公園や公共施設などに数多く設置されています。代表作として挙げられるのは、大倉山公園の『EVA』、東遊園地の『MARINA』、須磨パティオの『愛の献金』、そしてポートアイランドに点在する数々の彫刻などです。これらの作品は、それぞれの場所に調和しながら、街の風景に新たな魅力を加えています。まるで、神戸の街そのものが、新谷琇紀の芸術によって彩られているかのようです。

1971年にはイタリア人女性、モナイ・パトリツィアと結婚。パトリツィアは彼の多くの作品におけるモデルとなり、作品に深みと奥行きを与えました。二人の間に生まれた娘二人は、後に新谷彫刻研究所を継承し、現在も新谷琇紀の芸術を継承、発展させています。

彼の芸術的功績は高く評価され、半どんの会現代美術賞（1975年）、神戸市文化奨励賞（1989年）、神戸市文化賞（1999年）、兵庫県文化賞（2002年）など、数々の賞を受賞しました。しかし、2006年8月31日、肝不全のため69歳で永眠しました。

新谷琇紀の作品は、単なる芸術作品としてだけでなく、神戸という街の文化遺産、そして「愛」という普遍的なテーマを語り継ぐ象徴として、これからも人々の心に深く刻まれ続けることでしょう。彼の作品を通じて、私たちは「愛」という言葉を、改めて深く考えさせられるのです。

主な作品と設置場所

以下に、新谷琇紀の代表的な作品とその設置場所を、いくつか紹介します。

『EVA』(1973年): 兵庫県神戸市中央区楠町4 大倉山公園、兵庫県神戸市須磨区中島町1 下中島公園
『みどり』(1974年): 兵庫県神戸市中央区楠町4 大倉山公園
『MARINA』(1976年): 兵庫県神戸市中央区加納町6 東遊園地北側
『愛の献金』(1976年、1980年): 神戸市須磨区須磨浦通5 山陽須磨駅前、兵庫県神戸市須磨区中落合2 須磨パティオ1番館北西角
『AMORE』(1978年、2005年): 兵庫県神戸市北区鈴蘭台西町1 中畑山公園、兵庫県神戸市中央区加納町5 阪急三宮駅北側
『海の風』(1978年): 兵庫県神戸市中央区港島2 北公園
『WOLFCUB』(1980年): 兵庫県神戸市須磨区西須磨 須磨浦公園
『CONCORDIA』(1981年): 兵庫県神戸市中央区雲井通5 神戸市中央区庁舎南東角
* その他、ポートアイランド、三宮周辺など、神戸市内各地に多数の作品が設置されています。

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