新選組 (2000年の映画)

映画「新選組」の概要

「新選組」は、2000年1月15日に渋谷ユーロスペースで単館上映された、日本の映画作品である。この映画は、黒鉄ヒロシの同名漫画を原作としており、異なるアプローチで描かれている。監督の市川崑にとっては、彼のキャリアの中で唯一の非実写映画の試みとなった。制作に際しては、黒鉄の原画から切り絵風のキャラクターを活用し、そのキャラクターたちが演じる姿を撮影するという独特の手法が取られた。

公開当初、この手法に関連して「三次元的立体漫画映画」や「ヒューマングラフィック崑メーション」という造語が使われた。これにより、観客は新しい映像体験を期待することができた。一方で、製作や出演陣には、実写映画界で名を馳せた俳優たちが集結しており、作品全体のクオリティを引き上げる要素となっている。

制作の背景

「新選組」の制作は、市川崑監督の企画によって始まった。ただし、当初の計画では自主制作が検討されていたものの、撮影環境を考慮し、スタジオでの製作が必要であると判断された。その結果、監督は旧知の仲であるC.A.Lに協力を依頼し、フジテレビを通じて企画が進められた。この時点では、劇場映画として公開するか、テレビ放映とするかは未決定であった。

脚本は、市川監督が「新選組に集った若者たちの青春を描きたい」という思いを持ち、その意図を元にC.A.Lのプロデューサーである鶴間和夫の推薦で佐々木守が起用された。しかし、映画版は原作と内容が異なり、沖田総司の死を暗示するシーンで物語が幕を閉じることに決まったのは、市川監督の判断であった。

音声と撮影手法

映画製作にあたっては、出演者のスケジュールを考慮し、全てのセリフはプレスコ収録で行われた。これは、演者たちが編集済みの音声を元に撮影を行うスタイルで、現場でその音声を流しながら進行された。また、撮影時には、原画が貼り付けられたウレタンボードを用い、画面の立体感が意識された。このため、視覚的な単調さを避けるために、実写映像を一部挿入したり、多様なカメラワークが用いられたりした。

音楽と主題歌

音楽面では、予算の都合からタイアップとして主題歌が制作された。作曲は小西康陽が担当し、彼は撮影現場を視察し、ラッシュ映像を鑑賞した後に曲作りに取り組んだ。市川監督も仕上がった曲を聴いた上で、タイトルバックの修正に取り組むなど、音楽との調和を図った。

キャストとスタッフ

キャストには、近藤勇役に中村敦夫、土方歳三役に中井貴一、沖田総司役に原田龍二など、日本の実力派声優が集結した。また、スタッフには、市川崑が監督だけでなく脚色にも関与し、長いキャリアの中で積み重ねてきた経験を活かしている。制作チームは、視覚的にも聴覚的にも観客を引き込む作品を目指し、多くの試行錯誤を経て完成をみた。

「新選組」は、その革新的な制作手法や充実したキャストによって、ただの映画作品という枠を超え、多くの観客に新たな体験を提供した作品となった。

もう一度検索