新野直吉

新野直吉：東北地方史研究の巨星

概要

新野直吉氏（1925年7月28日-2024年1月17日）は、日本を代表する歴史家の一人です。専門は日本古代史、とりわけ東北地方史であり、その研究は国造制研究の第一人者として高く評価されています。秋田大学名誉教授、秋田県立博物館名誉館長などを歴任し、東北地方の歴史研究に多大な貢献を果たしました。本稿では、新野氏の生涯、研究業績、そしてその功績について詳細に解説します。

生い立ちと学問への道

新野氏は山形県に生まれました。神宮皇學館大學附属専門部在学中に応召、戦後は東北帝国大学（現東北大学）法文学部国史学科に入学、卒業後は同大学助手として教鞭を執ります。1972年には「日本古代における地方制度の諸問題に関する研究」で文学博士号を取得しました。その後、秋田大学に転じ、教授、教育学部長、学長などを歴任、教育・研究機関の運営にも大きく貢献しました。

研究と業績

新野氏の研究は、国造制を中心に据えつつ、東北地方の歴史を多角的に解明することを目指しました。古代東北における政治・社会構造、文化交流、そして人々の生活様式など、幅広いテーマに取り組んでいます。その研究成果は、単著、共著、論文、講演録などに数多く結実しています。特に『多賀城と秋田城』、『国造と県主』、『律令古代の東北』などは、東北地方史研究における古典的な著作として高く評価されています。秋田美人に関する著書も著しており、通時代的な奥羽の地域史研究者としての側面も持ち合わせていました。また、神道史にも精通していました。

教育者としての顔

新野氏は、研究活動と並行して教育者として多くの後進を育成しました。秋田大学で長年にわたって教鞭を執り、多くの優れた研究者を輩出しました。その指導は厳格で知られていましたが、同時に、学生たちへの深い愛情と、歴史研究への情熱を惜しみなく注いだ教育者としても尊敬を集めていました。北海道教育大学教授の佐々木馨氏など、多くの弟子がいます。

晩年とその後

秋田大学を停年退官後も、新野氏は精力的に研究活動を続け、秋田県立博物館館長などを務めました。2000年には勲二等旭日重光章を受章、秋田市文化賞、秋田県文化功労賞など数々の賞を受賞しました。2024年1月17日、老衰のため逝去されました。享年98歳。

主要著作

新野氏の著作は膨大ですが、代表的なものを以下に挙げます。

単著：『多賀城と秋田城』、『国造と県主』、『律令古代の東北』、『古代東国の開拓』、『出羽の国』、『研究史国造』、『古代東北の覇者 ― 史実の中の安倍・清原・藤原氏 ―』、『日本古代地方制度の研究』、『謎の国造』、『古代東国史の人々』、『秋田美人の謎』、『古代東北史の基本的研究』、『古代東北日本の謎』、『古代東北の兵乱』、『田村麻呂と阿弖流為 ― 古代国家と東北 ―』、『古代日本と北の海みち』など。
共著：『払田柵の研究』（船木義勝氏との共著）など。
論文：「古代北羽の仏教弘通」など。
講演録：「北方日本古代文化と秋田美人」など。
* 校注：『神道大系神社編 27』陸奥国下など。


総括

新野直吉氏は、日本古代史、特に東北地方史研究において、極めて重要な役割を果たした歴史家でした。その業績は、日本の歴史研究に大きな足跡を残すとともに、後世の歴史家たちに多大な影響を与え続けると考えられます。その功績は、単なる学問的成果にとどまらず、東北地方の文化、歴史、そして人々のアイデンティティの確立に大きく貢献したものと言えるでしょう。彼の残した膨大な研究成果は、これからも多くの人々に読み継がれ、未来へと受け継がれていくことでしょう。

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