新風舎

株式会社新風舎の歴史と経営破綻

株式会社新風舎（しんぷうしゃ）は、1996年の設立以来、日本の自費出版や共同出版を中心に活動していた出版社であり、その本社は東京都港区に位置していました。しかし、2008年に経営破綻を迎え、その結果、様々な書籍が絶版となる運命をたどることとなりました。

創業と成長

新風舎は、創業者の松崎義行が15歳の時に自ら詩集を刊行し、月刊「創作新風」をスタートさせたことで始まりました。初期のころから、地道な運営で成長を遂げ、1993年には大阪支社も開設し、年間の出版点数が100を超えるなど、実績を積み上げていきました。

特に、2005年には自費出版を含む出版点数が業界最高の2,719点となり、その後も2006年には社員数が360名に達し、業界のトップを争う存在となりました。

経営悪化と破産

しかし、好況も長くは続かず、2007年の後半から新風舎の経営は徐々に悪化していきました。そして、2008年1月に東京地方裁判所に民事再生を申請する事態に陥ります。この時点での負債額は、関連会社を含めて約25億円とされ、再建の見込みは薄くなっていきました。

同年1月18日には、民事再生手続が廃止され、破産手続きへと移行する決定が下されました。これにより、一般債権者への配当は不可能であることが判明し、2010年には正式に破産廃止が宣告され、新風舎はその歴史に幕を閉じました。

絶版と著作権の扱い

新風舎が倒産したことに伴い、出版されていた書籍は全て絶版扱いとなり、著作権は著者に返還されました。しかし、著者が望む場合には、同業の文芸社と再契約する選択肢が示されました。ただし、再契約の際には費用が別途発生する仕組みとなっていました。著者はその自由意思に基づいて、再出版本の契約を拒否することも可能でした。

トラブルと批判

新風舎は、一方で出版契約についてのトラブルも抱えました。例えば、2007年には元大学教授が新風舎との契約に不満を抱き、損害賠償を求める訴訟を起こしました。加えて、著者に対して高額な出版費用を要求することがあったとして、批判も寄せられました。

著名な批評家やジャーナリストからは、「書き手の夢を食い物にする商法」との厳しい指摘があったものの、同時に新風舎を擁護する見解も存在し、その評価は一様ではありませんでした。

主な出版物と影響

新風舎の代表的な出版物には、絵本「うしろにいるのだあれ」や、そのほか多くの文学作品がありました。特に「うしろにいるのだあれ」は、皇太子妃雅子が娘に読んでいる姿が話題となり、ヒットを記録しました。

新風舎の経営破綻は、出版社業界全体に与えた影響も大きく、出版不況の時代における自費出版のあり方や、著者支援に関する新たな議論を呼び起こしました。新風舎の物語は、一つの出版社の栄光と没落を通じて、出版業界の複雑な実情を映し出しているのです。

もう一度検索