方墳

方墳とは

方墳（ほうふん）は、古墳の墳丘の平面形が方形であるものを指します。古墳時代を通じて、円墳に次いで多く築造された墳形であり、日本各地に分布しています。

歴史的背景

方墳のルーツは、弥生時代の方形周溝墓や四隅突出型墳丘墓に遡ると考えられています。古墳時代初期の方墳は、これらの弥生時代の墳墓の延長線上に位置づけられ、その性格も大きく変わらないと見なされていました。しかし、前方後円墳の出現や土師器の使用開始を境に、方墳も古墳の一種として認識されるようになり、前期には「前期群集墳」という用語も用いられるようになりました。特に、出雲地方では四隅突出型墳丘墓の技術が古墳時代の方墳にも受け継がれており、古代出雲の技術力を示すものと考えられています。

各時代の特徴

古墳時代前期：
島根県安来市の大成古墳や造山古墳など、大型の方墳が築造されました。特に、出雲地方に多くの方墳が集中しており、前方後方墳のルーツも見られます。
古墳時代中期：
比較的小規模な方墳が多く見られます。この時期には、前方後円墳が主流となりますが、地域によっては方墳も引き続き築造されました。
古墳時代後期・終末期：
7世紀に入ると、有力者の古墳として再び方墳が採用されるようになります。用明天皇陵とされる大阪府の春日向山古墳や、推古天皇陵とされる山田高塚古墳などがその例です。また、蘇我馬子の墓とも言われる石舞台古墳も、上円下方墳とする説があります。
終末期には、千葉県の龍角寺岩屋古墳のように、一辺が80メートルを超える巨大な方墳も築造されました。また、奈良県の桝山古墳は全国最大の方墳とされています。

日本各地の方墳

日本各地には、様々な時代や規模の方墳が存在します。

東北地方：
宮城県名取市の飯野坂古墳群には、二基の方墳のほか、後期の方墳や消滅した二方墳が存在しました。
関東地方：
千葉県の龍角寺岩屋古墳は、終末期最大級の方墳です。
千葉県山武市の駄ノ塚古墳は、610年から620年の間に築造された可能性が高いとされています。
群馬県の宝塔山古墳や蛇穴山古墳は、古墳時代終末期に築造された大型の方墳です。
中部・東海地方：
岐阜県の河合古墳群には、次郎兵衛塚1号墳のような周溝を持つ方墳が見られます。石室や副葬品も多数発見されています。
北陸地方：
石川県の須曽蝦夷穴古墳は、古墳時代後期の方墳です。
近畿地方：
奈良県の鴨都波遺跡からは、三角縁神獣鏡が出土した小方墳が見つかっています。
橿原市の四条1号墳は、木製埴輪が出土した5世紀後半の方墳です。
御所市のネコ塚古墳は、大型の前方後円墳の陪塚として築造された方墳です。
桜井市の赤坂天王山古墳は、崇峻天皇陵とする説が有力な大型の方墳です。
香芝市の平野塚穴山古墳は、7世紀後半の終末期の方墳です。
大阪府太子町の葉室塚古墳は、前方後円墳が終焉した後に築造された方墳です。
和歌山県の岩橋千塚や御坊市の岩内には、首長墓にふさわしい規模の方墳が見られます。
中国地方：
島根県東部の出雲地方には、特に多くの方墳が分布しています。神原神社古墳や山代方墳、永久宅後古墳などが知られています。
7世紀半ばには、松江市の廻原1号墳のような特異な構造の方墳も見られます。
四国地方：
高知県の伏原大塚古墳は、四国最大の方墳で、女性の装飾品が多数出土しています。卑弥呼の墓とする説もあります。
九州地方:
福岡県の祇園山古墳は、3世紀中期の方墳であり、卑弥呼の墓とする説があります。
大分県の古宮古墳は、九州で唯一の横口式石槨を持つ方墳です。
宮崎県の常心塚古墳は、石舞台古墳に類似した構造の方墳です。

まとめ

方墳は、古墳時代を通じて多様な形状や規模で築造され、地域や時代によって異なる特徴を持っています。それぞれの地域における有力者や権力者の墓として、日本の古墳文化を形成する上で重要な役割を果たしました。これらの古墳は、当時の社会や文化を理解するための貴重な手がかりとなっています。

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