日亨 (日蓮正宗)

日亨（にちこう）

日亨は、慶応3年（1867年）に生まれ、昭和32年（1957年）に90歳で没した、大石寺第59世法主です。堀姓で、道号を慈琳、水鑑阿闍梨とも称します。「にちこう」という読みから、日興と間違われることが多いため、「堀上人」「堀猊下」とも呼ばれていました。また、隠居していた伊豆の畠毛の地名から「畠毛の猊下」とも呼ばれていました。

生い立ちと出家

日亨は、九州久留米藩士の家に生まれ、幼名を浪二郎と名付けられました。幼くして母と死別し、祖父から四書五経や軍記物を学びました。13歳で小学校教師となった後、19歳で日蓮正宗に帰依しました。その後、霑妙寺の住職であった尼僧の妙寿を師として得度し、後に隠尊の鈴木日霑に師を変更し、宗門内外の史書研究を始めました。

宗門での活動

1893年（明治26年）に大石寺浄蓮坊に勤務し、常在寺、常泉寺の住職を歴任しました。1905年（明治38年）に能化となり、1913年（大正2年）には宗会議長に就任しました。寺務のかたわら、宗門古文書の調査研究に尽力し、全国を巡って史料を収集しました。

法主就任と隠居

1925年（大正14年）に第58世土屋日柱が宗会により不信任となり、後任として日亨が管長に擬されました。翌年には日柱から相承を受け、大石寺第59世法主として登座しました。しかし、2年後の1927年（昭和2年）には、第60世阿部日開に法を付嘱して隠居し、以後は函南村畠毛で宗学研究に専念しました。

隠居後の活動

隠居後、日亨は『富士宗学全集』の編纂に力を注ぎ、原本の書写や「日寛上人全伝」「南条時光全伝」などを著しました。1937年（昭和12年）には「身延離山史」を刊行し、1938年（昭和13年）には134巻に及ぶ『富士宗学全集』を完成させました。戦後は宗門の長老として重きをなし、1952年（昭和27年）には宗旨建立700年記念大法要を第64世水谷日昇と共に執り行いました。また、創価学会の初代会長である牧口常三郎の法要では導師を務め、創価学会が発刊した『日蓮大聖人御書全集』の編纂も担当しました。

その後

日亨の弟子である第61世水谷日隆は、戒壇本尊が日蓮の作ではないという疑念を抱き、登座後は大石寺に登山することはなかったとされています。日亨は、昭和32年（1957年）11月23日に90歳で亡くなり、葬儀は第65世堀米日淳が導師を務めました。

日亨は、宗門の歴史研究に貢献し、その業績は今日でも高く評価されています。

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