日出処の天子

日出処の天子

『日出処の天子』（ひいづるところのてんし）は、日本の漫画家・山岸凉子によって1980年から1984年にかけて『LaLa』で連載された作品です。この作品は、厩戸王子（聖徳太子）の生涯を背景にし、彼の成長や人間関係を掘り下げています。1983年度には第7回講談社漫画賞少女部門を受賞し、その評価は高まっています。

概要

本作は、飛鳥時代を舞台に、厩戸王子の少年時代から摂政としての活躍までの物語を描かれています。厩戸王子と蘇我毛人を中心に展開され、王子の政治的な智謀や、彼を取り巻く人々との複雑な関係が描かれています。厩戸王子は超能力を持つとされ、その存在は母親の穴穂部間人媛に恐れられる一方で、周囲からは尊敬を集めています。作品の特筆すべき点は、厩戸王子が天才でありながらも、愛や孤独を抱える人物として描かれていることです。

多くの登場人物が印象的であり、特に蘇我毛人は王子の心の支えとして位置づけられています。彼もまた、厩戸に対する複雑な感情を抱くキャラクターであり、二人の関係は深い絆と葛藤に満ちています。物語は、厩戸王子が布都姫に恋をすることで嫉妬や悲劇が生まれ、やがて彼の決断が影響を及ぼす展開へと進んでいきます。

この漫画は、その深い人物描写と魅力的なストーリーテリングから注目を集め、多くの読者を惹きつけました。特に、厩戸王子の表情や心情は、細やかな描線によって描かれており、非常にリアルに感じられます。

一方で、作品の中で厩戸が布都姫を殺害しようとする場面では、彼の内面の暗い部分も浮き彫りになり、善と悪の間で揺れ動く人間の本質について考えさせられます。

また、作品の初期には、法隆寺が作品に対して否定的な意見を出したこともありましたが、後にそれは報道の捏造であったことが判明しました。このように、『日出処の天子』は、作品が社会に与えた影響についても興味深い事例を持っています。

2021年には大阪市立美術館で特別展が開催され、原画も展示されるなど、作品の人気は現在も続いています。さらに、2023年には関連する雑誌特集でも取り上げられ、その影響力は衰えることがありません。

作品を通じて描かれる愛、孤独、政治などのテーマは、何千年も前の物語でありながら、現代にも通じる普遍的なものを含んでいます。これにより、『日出処の天子』は単なる漫画作品を超え、時代を超えた人間ドラマとして多くの支持を集めています。

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