日吉造

日吉造（ひえづくり）とは

日吉造は、平安時代初期に成立した特異な社殿の形式であり、特に滋賀県大津市にある日吉大社に見られるスタイルです。一般的には「ひよしづくり」とも読まれますが、建築学の専門文献では「ひよしづくり」という読みは誤りとされています。今回は、日吉造の特徴や歴史的意義について詳しく解説していきます。

様式の特長

日吉造は、入母屋造平入の変型にあたり、極めて特殊な構造を持っています。この形式は「聖帝造」や「山王造」とも呼ばれ、成立時期ははっきりとしていないものの、平安時代中頃のものと考えられています。具体的には、正面に三間、側面に二間を有する身舎があり、その主要部分に前方と両側面に一間の庇が付属しています。

屋根は入母屋造で、檜皮葺で造られていますが、庇のない背面側は垂直に切り落としたような形状をしています。身体部分が内陣を形成し、床が一段上がっているのが特徴です。さらに、前面には向拝が付いていますが、東本宮の場合は背面の縁の一部が身舎の床に合わせて高くなっています。全体的に見て、床の高さが際立っており、床下には「下殿」と呼ばれる祭場が設けられ、ここには下級の僧が参詣していたとされています。

宗教的意義

このような特異な構造は、比叡山を御神体と捉えているため、社殿がその拝殿としての役割を持つために設計されたとされます。日吉造の特質は、その宗教的背景に根ざしており、神社建築の中でも特に重要な位置を占めています。

千木や堅魚木について

日吉造のもう一つの特徴として、屋根に千木や堅魚木が設けられない点が挙げられます。これは、伝統的な神社建築のスタイルから外れた独自の特徴です。これにより、日吉造の建物はさらに一層、その独自性を強調しています。

参考文献

日吉造の詳細については、以下の参考文献が役に立つでしょう。

• - 前久夫著『古建築の基礎知識』光村推古書院（1986年）
• - 妻木靖延著『図解 ここが見どころ! 古建築』学芸出版社（2016年）

また、専門辞典にも日吉造に関する情報が掲載されています。

• - 『建築大辞典』第2版普及版（彰国社、1993年）
• - 『広辞苑』第七版（岩波書店、2018年）

このように、日吉造はその独特な建築様式を通じて、日本の伝統的な社殿建築の中でも特別な存在感を持っています。日吉大社を訪れる際には、この独特の構造にぜひ注目してみてください。

もう一度検索