日新館 (対馬府中藩)

日新館は、江戸時代末期に対馬府中藩によって設立された藩校です。元治元年（1864年）、藩主である宗義達が、家臣の大浦教之助の進言を受け、時勢に対応できる人材育成を目指し厳原に創設されました。

日新館設立の経緯

日新館設立の背景には、当時の社会情勢がありました。尊王攘夷の思想が広まり、幕府の権威が揺らぐ中、対馬藩もまたその影響を受けていました。大浦教之助は、このような状況下で、藩士の教育を刷新し、有能な人材を育成することが急務であると考えたのです。

日新館は、家老の古川将監を総裁とし、大浦遠が学頭を務めました。日新館設立以前にも、対馬藩には小学校（8歳から15歳対象）と、思文館（15歳以上対象）がありましたが、日新館の発足に伴い思文館は統合されました。

日新館での教育

日新館の教育は、従来の藩校とは一線を画すものでした。政治や政策についても議論し、藩政への献策も行うという、非常に進歩的なものでした。このような教育を受けた藩士は200名に及び、日新館はまもなく尊攘派の拠点となりました。藩士たちは、尊王攘夷の思想を学び、国事に奔走する人材へと成長していきました。

勝井騒動と日新館の終焉

しかし、日新館の隆盛は長くは続きませんでした。移封問題や尊王攘夷を巡る国内情勢の影響に加え、佐幕派の勢力が台頭し、日新館の存在を脅かしました。元治元年（1864年）10月、佐幕派の勝井五八郎らによって、日新館派に対する大規模な粛清が行われました。これが「勝井騒動」です。

勝井騒動によって、日新館派の藩士たちは、わずか数名を残して殺害、処刑、あるいは自害に追い込まれました。日新館は壊滅的な打撃を受け、創設からわずか数ヶ月で廃止されることとなりました。勝井騒動は、対馬藩における尊王攘夷運動に大きな影響を与え、その後の藩政にも暗い影を落としました。

日新館は短命に終わりましたが、その教育方針や、そこで育まれた人材は、対馬藩の歴史において重要な役割を果たしました。また、勝井騒動は、幕末の動乱期における地方藩の অভ্যন্তরীণ対立の激しさを物語る出来事として、歴史に刻まれています。

もう一度検索