日本における同性結婚

日本における同性結婚：現状と課題

日本において、同性カップルの法的権利を巡る議論は、近年ますます活発化しています。2023年現在、日本はG7諸国の中で唯一、国レベルで同性結婚または同性間パートナーシップを認める法律を制定していません。代わりに、多くの地方自治体が独自の「パートナーシップ宣誓制度」を導入し、同性カップルを公的に認める取り組みを進めています。

パートナーシップ宣誓制度

パートナーシップ宣誓制度は、地方自治体条例または要綱に基づき運用されています。条例型は議会の議決が必要で安定性が高い一方、要綱型は首長の決裁で柔軟性が高い反面、法的拘束力が限定的です。制度の内容も自治体によって異なり、権利や義務の範囲も様々です。2024年5月28日現在、458の自治体がパートナーシップ制度を導入しており、人口カバー率は上昇を続けています。導入自治体の中には、都道府県単位で導入しているところや、県内の全市町村で導入しているところもあります。

同性婚訴訟

同性婚の合憲性を問う集団訴訟は、2019年から各地で提起されています。2024年3月14日、札幌高等裁判所は、同性間の結婚を認めていない民法と戸籍法の規定が憲法24条1項、同2項、14条に違反するとする画期的な判決を下しました。これまでに各地の裁判所では、損害賠償請求は棄却されるものの、憲法違反を指摘する判決が相次いでおり、今後の最高裁判所の判断が注目されています。

憲法解釈

憲法24条1項「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し…」の解釈をめぐっては、「両性」を男女に限定し、同性婚は憲法改正が必要とする改正必要論と、憲法は同性婚を禁止しておらず、改正不要とする改正不要論があります。改正不要論では、憲法24条の趣旨は、個人の尊厳と両性の平等を保障することであり、同性婚を排除する意図はないと主張しています。2019年、日本弁護士連合会は、同性婚を認めることが憲法違反ではないとする意見書を公表し、複数の裁判所も憲法違反を指摘する判決を下しています。

世論調査

同性婚への世論は、賛成が徐々に高まっています。ただし、「強く賛成」の割合は依然として低く、反対意見も根強く残っています。2015年以降、多くの世論調査で賛成意見が反対意見を上回っており、特に若い世代での賛成率が高い傾向が見られます。ピュー・リサーチ・センターの調査では、日本の「強く賛成」の割合は、同性婚を容認する国のうち最低レベルでした。

歴史

日本の同性愛カップルに関する動きは、1990年代後半から始まりました。2015年、渋谷区が全国で初めてパートナーシップ宣誓制度を導入したのを皮切りに、導入自治体は増加しています。2021年には兵庫県明石市が、カップルだけでなく子供との親子関係も認める「ファミリーシップ制度」を日本で初めて開始しました。

外国政府機関関係者

外務省は2003年から、外交官の同性配偶者に対し、異性配偶者と同様に査証免除措置を適用しています。2013年からは、在日米軍関係者の同性配偶者にも同様の措置が適用されています。

課題と問題点

同性婚をめぐる議論では、様々な課題や問題点が指摘されています。結婚を選択しない人やシングル家庭などへの影響、代理出産問題、司法権の逸脱といった懸念も存在します。今後の議論においては、これらの点についても十分な検討が必要です。

まとめ

日本における同性結婚の議論は、司法判断、世論、政治的動向など、様々な要素が複雑に絡み合い、今後の展開は予断を許しません。しかし、裁判所の判決や地方自治体の取り組み、そして変化する世論は、同性カップルに対する社会の理解と法的保護の必要性を改めて浮き彫りにしています。今後、同性カップルの権利保障に向けた議論がさらに深まり、より包括的な社会が実現されることが期待されます。

もう一度検索