日本の音響装置付信号機

日本の音響装置付信号機について

日本の音響装置付信号機は、視覚に障害を持つ歩行者に対して、安全に道路を横断できるよう支援する重要な交通インフラです。歩行者用信号が青になった際に、音による誘導で横断を促します。全国には2万基以上が設置されており、特別支援学校や福祉施設、公共施設など、視覚障害者の利用が多い場所に優先的に設置されています。

音響装置の種類と特徴

音響装置付信号機には、大きく分けて擬音式とメロディ式の2種類があります。

擬音式: 「カッコー」または「カカコー」が主道路用、「ピヨ」または「ピヨピヨ」が従道路用として使用されます。これらの音は、東西または南北の横断方向を区別するために使い分けられます。
メロディ式: 「通りゃんせ」や「故郷の空」といった曲が使用されます。地域によっては、「おうま」（名古屋市）や「乙女の祈り」（青森県）など、独自のメロディが採用されている場所もあります。

スピーカーは外付けと灯器内蔵の2種類があり、外付けの場合は、黄色や白色、灰色などの色で設置されることが一般的です。美観地区では、景観に配慮して茶色に塗装されることもあります。

誘導音の鳴動方式

誘導音の鳴り方には、以下の3つの方式があります。

同種同時鳴き方式: 同じ種類の音が、順方向と逆方向から同時に鳴ります。
同種鳴き交わし方式: 同じ種類の音が、順方向と逆方向から交互に鳴ります。
異種鳴き交わし方式: 順方向と逆方向で異なる種類の音が、交互に鳴ります。スクランブル交差点では、4方向のスピーカーから順番に音が鳴る方式も採用されています。

誘導音が鳴り終わると、青信号が点滅し始めますが、地域によっては点滅時に警告音が鳴る場合があります。警告音は、メーカーによって音の種類や音程が異なり、「ポーピー」「プーッ」「プー」などがあります。また、一部地域では、警告音の代わりに音声アナウンスや誘導音の速度を速めることで、赤信号への変化を知らせています。

音響装置の地域性

音響装置の採用方針は、各地方警察の裁量に委ねられているため、同じ地域内でも異なる方式の信号機が混在することがあります。過去には、メロディ式と擬音式が混在していましたが、警察庁は2003年に擬音式の異種鳴き交わし方式を推奨しました。これにより、メロディ式は減少傾向にありますが、東京都など一部地域では、複雑な交差点などでメロディ式が使われることがあります。

騒音問題と対策

音響装置は、常時音が鳴るタイプと、ボタンを押した時だけ音が鳴るタイプの2種類があります。常時音が鳴るタイプは、近隣住民からの騒音苦情が多いため、東京都などでは押しボタン式が主流となっています。また、夜間には音を小さくしたり、停止するなどの対策が取られています。

近年では、スマートフォンアプリと連携し、信号情報を音声で伝える高度化PICS付信号機も登場しています。これにより、夜間や鳴動時間外でも、視覚障害者が安全に横断できるようになることが期待されています。

その他の関連技術

音響装置付き信号機の他に、交通弱者用押しボタン箱や歩行者横断支援装置（PICS付信号機）なども音を出力する機器です。これらの機器は、視覚障害者だけでなく、高齢者や聴覚障害者など、様々な交通弱者の移動を支援しています。また、「ラジオ・チャリティー・ミュージックソン」では、これらの装置を「音の出る信号機」として設置するための募金活動を行っています。

主な製造メーカー

コイト電工（旧 小糸工業）
京三製作所
日本信号
交通システム電機（旧 陸運電機）
名古屋電機工業
三工社
篠原電機

まとめ

日本の音響装置付信号機は、視覚障害者の安全な移動を支えるために重要な役割を果たしています。技術の進歩とともに、より安全で便利な社会を目指して、日々進化を続けています。

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