日本アート・シアター・ギルド

日本アート・シアター・ギルド（ATG）

概要

日本アート・シアター・ギルド（ATG）は、1961年に設立され、1980年代まで続いた映画会社です。この会社は他の映画会社とは異なる立場から、非商業的な芸術作品の制作や配給を行い、日本の映画界に大きな影響を与えました。特に、若手監督の発掘や育成に注力し、後の日本映画界の発展に寄与した点が評価されています。また、ATGは公開した作品ごとに映画雑誌『アートシアター』を発行し、映画のシナリオや評論を収録するなど、映画文化の発展にも貢献しました。

歴史と背景

ATGは「良質のアート系映画をより多くの人々に届けたい」という理念のもと設立されました。年会費を払うことで、一般的ではない映画を安価で観ることができ、特に若者からの支持を得ました。1960年代には学生運動やベトナム反戦運動が盛り上がりを見せ、若者たちがシリアスな映画やオルタナティブな映画に関心を持つようになったため、ATGは多くの人に受け入れられる存在になりました。特に、新宿にあるアートシアター新宿文化は、多くの話題作を上映し、若者文化の発信地となりました。

設立まで

1950年代にはアジア映画やフランス・ヌーヴェルヴァーグの影響を受けて、日本でも芸術映画への関心が高まりました。1957年、若手映画人たちは「シネマ57」を結成し、実験映画の制作を進めていました。この流れを受けて、川喜多かしこがアート・シアターを目指す「日本アート・シアター運動の会」を設立し、多くの支持を集めました。この会の活動が基盤となり、1961年にATGが誕生しました。

各別期

第1期（1961 - 1967年）

ATGの初期は、主に外国映画の配給を行っていました。作品選定は批評家による委員会で決定され、質の高い映画を提供することに注力しました。1966年には三島由紀夫の短編作品がヒットし、ATG方式と呼ばれる製作方針が確立されます。この方式は低予算ながらも多くの重要作品の制作を可能にしました。

第2期（1967 - 1979年）

この時期にはATGも大手映画会社と同様、興行的な成功を目指すようになりましたが、当時のポルノ映画ブームに便乗し、独自の路線を維持しました。しかし、徐々に加盟映画館が減少し、経営は厳しさを増していきました。1979年には社長が退任し、新たなリーダーシップが求められました。

第3期（1979 - 1992年）

佐々木新社長の下、ATGは新たな製作方針を採用し、多くの若手監督を起用するようになりました。この変化によってATGの作品は実験性から青春映画や娯楽映画へとシフトし、新しい監督たちが数々のヒット作を生み出しました。しかし、ATG自体は1992年に活動を停止する運命を迎えます。

合併と終焉

その後ATGは休眠状態となり、2018年11月1日、東宝に吸収合併され、60年近い歴史に幕を閉じました。ATGは日本映画界に多大な影響を与え、今なお多くの映画人に影響を与え続けています。

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