日本内燃機

日本内燃機の歴史

日本内燃機は1932年（昭和7年）に設立された日本の自動車メーカーで、現在の日産自動車系列に属するエンジン製造会社、日産工機の前身企業です。その活動は1930年代から1950年代にかけて「くろがね」のブランド名でオート三輪トラック市場において代表的なメーカーとして知られています。

創業と技術開発の始まり

日本内燃機の起源は、1917年に創業者となる蒔田鉄司（まきた てつじ）が設立した「秀工舎」に遡ります。彼は東京高等工業学校の機械科を卒業後、自動車開発に取り組む中で、1926年には自動三輪運搬車に関する設計を始めました。1927年には「ニューエラ」と名付けられたオート三輪を発表し、その後のオート三輪業界での地位を確立しました。

日本自動車時代

1928年に蒔田は大倉財閥系の日本自動車に常務取締役として迎え入れられ、新たに設計した347cc4ストローク・空冷単気筒エンジンを搭載した製品が生産されました。こうしたエンジンは他社のオートバイやオート三輪モデルにも搭載され、業界の先頭を走る存在となりました。1932年には日本自動車の車両製造部門が独立し、正式に日本内燃機が設立されました。この時点で蒔田は技術顧問として引き続き開発を指揮しました。

軍需関連とブランド変更

日本内燃機は陸軍との強い関係を築きながら、1930年代には軍用車両の製造も行いました。特に、くろがね4起と呼ばれる日本初の本格的な四輪駆動車が量産化され、その存在は特筆すべきものとなりました。1937年には英語名のイメージがあまり一般に受け入れられず、ブランド名を「くろがね」に変更し、軍国的な風潮に沿った形で再出発を果たしました。

戦後の経営不振

第二次世界大戦後、オート三輪の再生産を模索し、1949年には社名を日本内燃機製造に改めました。しかし、急激に変化する市場環境の中で、競争力を失っていきました。朝鮮戦争による特需や新型車両の需要増加にもかかわらず、経営陣は過信し放漫経営に突入。その後の不景気の影響で内燃機の経営基盤が弱体化し、主力製品の生産は大幅に縮小されることとなりました。

東急グループへの吸収合併

1957年、東急グループの五島慶太が日本内燃機を注視し、倒産状態にあったオオタ自動車工業を吸収合併しました。それに伴い社名は「日本自動車工業」と変更され、技術者不足の中新たな挑戦が始まりますが、競争激化や独自の技術開発力の低下により市場での存在感は薄れていきました。

業界からの撤退

「くろがね」ブランドはかつての栄光を失い、1962年に自動車製造から撤退。その後、日産工機として存続へと至りました。日本内燃機の歴史は、戦前から戦後にかけての日本の自動車産業の変遷を象徴するものであり、技術の進化と経営の難しさを物語るものとなっています。

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