日本史探訪

NHK総合テレビで1970年4月8日から1978年2月28日にかけて放送された歴史教養番組シリーズです。番組名は当初『日本史探訪』として始まり、1976年4月27日からは『新日本史探訪』と改題されて継続されました。

本番組は、日本の放送史上、NHKおよび民放を通じて初めて、毎週決まった時間に放送される「定時」の歴史番組として制作された点に大きな特徴があります。これにより、歴史分野の番組がテレビ編成の中に確固たる位置を占める先駆けとなりました。

番組の基本的なコンセプトは、誰もが学校などで学んだことのある日本の歴史上の出来事や、教科書でおなじみの著名な人物をテーマとして取り上げることでした。各回の放送では、そのテーマに関する深い知見を持つ歴史作家や専門家などがゲストとして招かれ、彼らが持つユニークな視点や、従来の歴史観とは異なる独自の解釈を紹介しました。さらに、単なるスタジオでの解説に留まらず、番組ではテーマにゆかりのある史跡や事件の舞台となった場所を訪れる現地取材を重視しました。ゲストの提示した視点を、実際の場所の映像や遺物、関連資料などを通して検証していく手法が用いられ、これにより視聴者はより臨場感をもって歴史に触れることができました。

『日本史探訪』は1976年3月27日まで放送され、当初は毎週30分枠でした。放送時間帯は年度によって複数回変更されており、例えば1970年度は水曜夜と同日午後の再放送、1974年から1975年度にかけては土曜夜と金曜夕方の再放送といった形で放送されていました。続く『新日本史探訪』は、1976年4月27日から1978年2月28日まで放送され、こちらは月1回、45分枠へと拡大されました。番組名の変更とともに、取り扱うテーマの幅も広がり、より多角的な視点から歴史を探求する試みがなされました。

その質の高い内容と、歴史を分かりやすく伝えるための工夫は各方面から高く評価されました。具体的には、1970年度テレビ大賞優秀番組賞をはじめ、ギャラクシー賞、日本視聴者会議優秀番組表彰など、数々の賞を受賞しており、当時のテレビ番組の中でも特に優れたものの一つとして認識されていました。

また、番組で放送された内容は、書籍としても広く展開されました。角川書店から『日本史探訪』シリーズとして全17集、改題後の『新日本史探訪』シリーズとして全2集が刊行され、多くの読者に番組の解説内容を伝える役割を果たしました。これらの書籍は、その後角川文庫としても再刊され、長期にわたって親しまれました。特に、文庫化に際しては、司馬遼太郎、松本清張、永井路子といった著名な作家ごとにテーマを再編集したシリーズも刊行され、それぞれの作家の歴史観を通じて番組内容に触れることができるユニークな試みも行われました。さらに、一部のテーマはさいとう・たかをによって漫画化されるなど、多様なメディアミックス展開も見られました。ただし、書籍版の『日本史探訪 別巻 古代編』については、番組の内容とは直接関係なく、雑誌の企画から生まれたものである点が特筆されます。

『日本史探訪』および『新日本史探訪』シリーズは、その後のNHKにおける歴史番組の系譜において重要な位置を占めており、「歴史への招待」「その時歴史が動いた」「歴史秘話ヒストリア」といった後続番組にも少なからず影響を与えた、日本のテレビ史における画期的な歴史教養番組であったと言えます。

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