日本地理教育学会

日本地理教育学会（にほんちりきょういくがっかい）は、1950年に設立された、地理教育の分野を専門とする日本の学術団体です。事務局は東京学芸大学内に設置されています。

本学会の活動の根幹は、「地理学とその応用、特に地理教育の発達普及を図る」という目的にあります。これは、学術的な地理学の研究成果と、学校教育現場における地理教育の実践とを結びつけ、両分野の発展に貢献することを目指すものです。会員構成にもその特色が表れており、大学で研究・教育に携わる研究者だけでなく、小学校、中学校、高等学校の教員が多数を占めています。この会員構成の多様性が、地理教育の現状や理想的なあり方を巡る議論、あるいは効果的な教材・教授法に関する情報交換を活発にしています。

学会は会員の研究交流や地理教育の振興のために、様々な活動を実施しています。年間行事の中心となるのは、年に一度開催される「大会」です。また、年に数回開催される「例会」は、非会員も参加可能で参加費無料という開かれた形式で行われています。これらの他にも、合同シンポジウムやミニシンポジウムなどを通じて、多様なテーマでの研究発表や議論が行われています。特に注目すべき活動の一つに、「全国地理学専攻学生卒業論文大会」があります。これは毎年3月中旬に東京学芸大学を会場として行われ、全国の地理学専攻学生が自身の卒業論文の研究成果を発表する貴重な機会となっています（発表15分、質疑応答5分）。この大会は長年にわたり継続されており、未来の地理学研究者・教育者を育成する役割も担っています。さらに、会員の研究意欲を奨励するため、見学、研究旅行、協同調査の実施を支援したり、地理学研究やその応用技術に関する調査の連絡・助成を行ったりしています。地理教育の改善や発展に関わる重要事項の企画・実施も学会の重要な役割の一つです。機関誌『新地理』をはじめとする出版物の発行や、国内外の学術・教育機関との連携も積極的に行われています。

学会の活動を支える中心的な媒体が機関誌『新地理』です。1952年5月に創刊され、現在は年3回発行されているこの機関誌は、B5判で刊行されています。会員の研究成果を公表する場であると同時に、地理教育に関する調査、研究、実践を促進することを目的としています。『新地理』には、アカデミックな「論説」や「研究ノート」に加え、教育現場での取り組みを報告する「授業実践報告」、書評、学会記事などが掲載されます。掲載される論文には査読制度が導入されており、学術的な質が担保されています。本誌の最大の特徴は、大学等の研究者による学術論文だけでなく、小学校から高等学校までの教員による教育実践に基づいた研究報告が多数掲載されている点にあります。これにより、理論と実践が結びついた多様な視点からの研究が促進され、地理教育全体の発展に大きく貢献しています。他の地理学関連の学術誌ではあまり見られない、地理教育に特化したテーマの研究や、現場からの実践報告が豊富である点が、『新地理』が地理学と地理教育の研究・実践の融合を体現する機関誌である所以です。国際的な情報発信にも配慮しており、学会記事を除く全ての記事には英文でのタイトルと著者連絡先が付記され、論説や展望には英文抄録が必ず、その他の記事にも可能な範囲で掲載されています。グローバル化が進み地域理解の重要性が高まる現代社会において、教育のあり方が問われる中で地理教育の果たす役割は増しており、『新地理』の重要性も高まっています。投稿された論文は、編集委員会での審議、専門家による査読、担当委員による意見集約を経て、最終的な掲載の可否や修正の要望が決定されるプロセスを経ます。

日本地理教育学会は、日本地理学会をはじめとする他の地理学関連学会とも連携しており、地理関連学会連合にも参加しています。詳細については、学会の公式ウェブサイトなどで確認できます。

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