日本妖怪大全

『日本妖怪大全』：水木しげるによる妖怪の百科事典

『日本妖怪大全』は、漫画家であり妖怪研究家でもある水木しげる氏が、長年にわたり収集・研究してきた日本の妖怪に関する知識をまとめた書籍です。1991年に講談社から初版が刊行されて以降、続編や増補改訂版が出版され、水木氏の代表作の一つとして広く知られています。

概要

本書は、単なる妖怪の図鑑ではなく、妖怪の起源や伝承、文化的な背景までを深く掘り下げて解説している点が特徴です。初版である『日本妖怪大全』では、423点の妖怪画と解説が、五十音順に分類され、事典のように構成されています。続く『続・日本妖怪大全』では、288点の新たな妖怪画が追加され、水木氏ならではの視点で現代の妖怪も考察されています。

1994年には、正編の文庫版『図説 日本妖怪大全』、2007年には続編の文庫版『図説 日本妖怪大鑑』が刊行され、それぞれ妖怪画の追加や解説の加筆が行われました。そして、2014年には、これら文庫版2冊を合本し、大幅に加筆・再編集した『決定版 日本妖怪大全 妖怪・あの世・神様』が出版されました。この決定版には、50年以上描きためられた895点もの妖怪画が収録されており、水木氏の妖怪図鑑の集大成とされています。900ページを超える文庫本であり、その厚さから「枕にもなる」と水木氏自身が語っていたほどです。

本書の構成は、基本的に1ページに1体の妖怪が紹介されており、上部に妖怪のイラスト、下部に解説が配置されています。文庫版であるため、イラストは小さめですが、1冊に収録された妖怪の数は最も多くなっています。

備考

『日本妖怪大全』は、1968年12月に『週刊少年マガジン』の増刊号としても出版されており、これは水木氏にとって初めての妖怪画集でした。この初期の画集は、当時の妖怪イメージを大衆に定着させる上で重要な役割を果たしたとされています。漫画家の手塚治虫もこの画集を所持していたことが知られています。

また、『日本妖怪大全』は、水木しげるロードに設置されている妖怪ブロンズ像の選定にも役立ったとされています。さらに、本書は境港妖怪検定の公式テキストブックにも指定されています。

水木氏がマレーシアのセノイ族の村を訪れた際、彼らに本書を見せたところ、多くの人が妖怪を指さして「いる」「見た」と証言したというエピソードがあります。この出来事がきっかけとなり、水木氏は「妖怪千体説」を唱えるようになりました。この説は、妖怪は世界中に無数に存在するが、その種類は千種類程度に集約されるというものです。

作家のコリン・ウィルソンに本書を贈呈したところ、ウィルソン氏は、妖怪を絵で表現できることに大変驚き、羨ましがったと言われています。

『図説 日本妖怪大鑑』に掲載された「新ぬりかべ」と「新ぬらりひょん」は、2017年の大学入試センター試験「日本史A」の問題で、『妖怪ウォッチ』のキャラクターと共に取り上げられました。

書誌情報

『日本妖怪大全』 KCデラックス、1991年4月、ISBN 4-06-313210-2
『続・日本妖怪大全』 KCデラックス、1994年11月、ISBN 4-06-319546-5
『図説 日本妖怪大全』 講談社+α文庫、1994年9月、ISBN 4-06-256049-6
『図説 日本妖怪大鑑』 講談社+α文庫、2007年7月、ISBN 978-4-06-281126-2
『決定版 日本妖怪大全 妖怪・あの世・神様』 講談社文庫、2014年2月、ISBN 978-4-06-277602-8

関連書籍

『媒体別妖怪画報集I』（講談社〈水木しげる漫画大全集〉、2016年9月、ISBN 978-4-06-378154-0） - 1968年版『日本妖怪大全』や雑誌掲載の「妖怪画報」を収録。

脚注

参考文献

志村有弘『水木しげるの魅力』勉誠出版、2002年7月。ISBN 4-585-09075-4。
「水木しげる詳細年譜」『完全版 水木しげる伝』 下(戦後編)、講談社漫画文庫、2005年1月。ISBN 4-06-360838-7。
水木しげる『水木サンの幸福論』角川文庫、2007年4月。ISBN 978-4-04-192919-3。
水木しげる『カラー版 妖怪画談』岩波新書、1992年7月。ISBN 4-00-430238-2。
黒目友則『妖怪になりそこなった男 水木しげるロード物語』YMブックス、2007年7月。ISBN 978-4-903548-04-3。
京極夏彦『対談集 妖怪大談義』角川文庫、2008年6月。ISBN 978-4-04-362005-0。
* 京極夏彦『妖怪の理 妖怪の檻』角川文庫、2011年7月。ISBN 978-4-04-362010-4。

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