日本学校農業クラブ連盟

日本学校農業クラブ連盟（FFJ）

概要

日本学校農業クラブ連盟（FFJ）は、「Future Farmers of Japan」の頭文字を取った略称でも知られ、農業科や総合学科など、農業に関する専門教育を行う日本の高等学校に所属する生徒および教職員によって組織された全国規模の団体です。

この連盟の主な目的は、農業教育の質の向上を図ること、そして農業を学ぶ若い世代の人間的な成長や技術・能力の発展を促進することにあります。さらに、日本の農業全体、ひいては国際的な農業の発展にも貢献することを目指して活動しています。

連盟の活動は、生徒たちの自主的・自発的な取り組みを重視しており、日々の学習活動だけでなく、全国レベルでの研究発表や技術競技などを通じて、互いの成果を共有し、切磋琢磨する機会を提供しています。

歴史

日本において学校農業クラブが誕生した背景には、第二次世界大戦後の学制改革があります。1948年に新しい高等学校制度がスタートしたのに伴い、全国各地の農業高校で生徒たちの自主的な学習組織「学校農業クラブ（SAC: School Agriculture Club）」が次々と結成されました。これらの動きは、アメリカ合衆国で先行して活動していた「アメリカ合衆国学校農業クラブ連盟（FFA: Future Farmers of America）」の活動を参考にしています。

各地でSACが活発化する中で、全国的な連携組織を作ろうという機運が高まりました。そして1950年、各都道府県の農業クラブを統括する組織として「日本学校農業クラブ連盟（FFJ）」が正式に結成されました。同年11月2日には、東京都の日比谷公会堂で盛大な結成大会が開催されています。初代事務局は東京都立園芸高等学校内に設置されました。

組織と活動

FFJは、北海道から九州まで全国9つのブロックに分けられています。各都道府県には49の連盟（北海道のみ3連盟）があり、その下に約368校の加盟校があります。これらを合わせると、約8万人もの農業を学ぶ高校生がFFJの活動に参加しています。

主な活動内容としては、農業教育における研究成果を発表する全国研究発表会、専門技術や知識を競う全国競技会などがあります。これらの全国大会は、生徒たちが日頃の学習や研究の成果を披露し、他の学校の生徒と交流する貴重な機会となっています。また、機関紙の発行や、農業に関する専門的な知識・技術を測る検定なども主催・運営しています。

連盟の所在地は、〒102-0074 東京都千代田区九段南4-3-3 シルキーハイツ九段南2号館104です。

プロジェクト学習

農業クラブの活動の根幹には「プロジェクト学習」という手法があります。これは、学校で学んだ知識や技術を実際の農業活動に適用し、体験を通じて学ぶことを重視するものです。元々、アメリカの農学校で採用された「ホームプロジェクト」という形式が原点にあり、これは農家の子弟が家庭での農業を通じて学習を深める活動でした。

戦後日本の農業教育でも、このホームプロジェクト法が導入され、教職員が各家庭を訪問して生徒や保護者とともに技術指導を行う、実践的な学習が行われました。しかし、現在の日本では、学校内での計画立案、実行、評価といった一連のプロセスを通じて行う「スクールプロジェクト」が主流となっています。生徒たちはこのスクールプロジェクトで、各自が設定したテーマに基づいた研究や課題解決に取り組みます。

全国大会

FFJは年に一度、全国大会を開催しています。この大会は、全国の農業高校生が集まり、日頃の学習成果を発表したり、様々な分野の専門技術を競い合ったりする最大のイベントです。プロジェクト学習で得られた研究成果の発表会や、測量、農業鑑定など、多岐にわたる競技が行われます。各競技には、都道府県やブロックの予選を勝ち抜いた代表者が出場し、その技術を競います。

2025年の全国大会は、「第76回 西関東大会」として、同年10月21日から10月23日にかけて、山梨県、東京都、神奈川県を会場に開催される予定です。

全国大会で行われる主な競技

意見発表会: 農業や農業学習を通じて考えたこと、経験から得たことなどを、制限時間内にスピーチ形式で発表します。内容の独創性や論理性だけでなく、発表の技術や質疑応答への対応力も評価されます。
プロジェクト発表会: スクールプロジェクトとして取り組んだ研究活動の成果を、プレゼンテーション形式で発表します。生物科学、社会科学、農業政策など、発表内容は非常に多岐にわたります。学校によっては「課題研究」や「卒業研究」などと呼ばれる学習の集大成を発表する場です。
農業鑑定競技会: 農業に関する幅広い分野（農業、園芸、畜産、食品科学、造園、農業機械など）から、専門的な知識や技術、識別能力が問われる問題が出題されます。機器や材料の名称、生物の種類、計算問題などが出され、解答の正確性とスピードが競われます。
平板測量競技会: 地図作成の基礎となる平板測量の技術を競う競技です。決められた時間内に、いかに正確かつ迅速に測量を完了できるかがポイントとなります。
農業情報処理競技会: コンピュータを活用した情報処理能力を競う競技です。農業分野におけるデータ活用や文書作成などのスキルが問われます（公開競技）。
家畜審査競技会: 乳用牛（ホルスタイン）、肉用牛（黒毛和種）、豚などの家畜の外観を審査し、その特徴や優劣を判断する能力を競います。畜産に関する専門知識と観察眼が求められます（公開競技）。
* フラワーデザイン競技会: 園芸作物の知識や活用方法、フラワーデザインの技術を競います。個人またはチームで、与えられた条件の中で美しさや創造性を表現する能力が試されます（公開競技）。

また、全国大会期間中には「クラブ員代表者会議」も開催され、全国の単位クラブ（学校ごとの農業クラブ）の代表者が集まり、連盟の運営や今後の活動について話し合いを行います。

象徴

旗

FFJのシンボルマークは、「みのる稲穂に 富士と鳩」を組み合わせたデザインです。稲穂は日本の主食である米と農業の豊かさを、富士山は日本の象徴と連盟の全国的な広がりを、そして鳩は平和への願いを表しています。このマークは、「FFJの歌」の歌詞にも歌われています。

歌と踊り

「FFJの歌」は、1951年に作られた連盟の公式歌です。作詞は吉沢義之氏、作曲は堀内敬三氏によるものです。加盟校である農業高校では、学校行事などでこの歌を斉唱する機会が多く、多くの卒業生が覚えているほど親しまれています。2019年に放送されたNHK連続テレビ小説『なつぞら』では、劇中で農業高校生たちがこの歌を歌うシーンがあり、広く注目を集めました。また、FFJには「FFJ踊り」と呼ばれる踊りも存在し、大会などで披露されることがあります。

2000年には、連盟創立50周年を記念して新しいシンボルマークと、さだまさし氏が補作詞・作曲を手がけた新テーマソング「美しい未来へ〜Future Farmers of Japan〜」が発表されました。

関連情報

FFJは全国の農業高校に深く関わっており、日本の農業教育を語る上で欠かせない存在です。農業高校の生徒をテーマにした作品としては、漫画や映画になった『銀の匙 Silver Spoon』が知られています。

海外にも、FFJと同様の農業高校生や農業を学ぶ若者を対象とした組織が存在します。FFJの手本となったアメリカ合衆国のFFAのほか、韓国にはFFK、タイ王国には農業大学生を対象としたFFTなどがあります。また、地域社会における農業青年組織として「4Hクラブ」や「全国農業青年クラブ連絡協議会」なども、若い農業従事者の育成という点で関連があります。

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