日本書紀纂疏

日本書紀纂疏について

『日本書紀纂疏』は、日本の古典文学『日本書紀』に関する注釈書で、著者は一条兼良です。この作品は全6巻から成り、特に神代巻に焦点を当てています。書籍の成立時期は康正年間、具体的には1455年から1457年にかけて製作されました。この時代背景を考えると、室町時代の文化や思想を理解するための貴重な資料となります。

『日本書紀纂疏』は、単に日本の古典籍に限らず、漢籍や仏教文献、さらに韻書など多様な文献を参照しながら注釈が行われています。このような多角的なアプローチにより、文献学的な側面からも評価されており、室町時代における注釈書の中でも特に重要な位置を占めています。

兼良の注釈には、当時の神道に関する思想や彼自身の神道観が散りばめられていることが特徴です。彼は、儒教の思想に仏教の教えを融合させた「神儒仏三教一致論」を展開しており、これは彼が受け継いだ学統とも密接に関連しています。具体的には、彼の父である経嗣や、他の学者卜部兼熈からの影響を受けつつ、独自の論を築いています。

本書において特に注目すべき点は、兼良が当時の僧侶・円月が提唱した皇室の祖先に関する説、具体的には呉の太伯を祖とする説に対して厳しい批判を行ったことです。この批判は、彼が日本における皇室の権威やその起源について強い意見を持っていたことを示し、日本の学問に対する意識の高さを表しています。

このような背景を持つ『日本書紀纂疏』は、日本学における重要な文献であり、その歴史的・文化的価値は現在でも高く評価されています。

刊本情報

この注釈書は、神道に関する知識の体系化を目的に、次のような形で出版されています。

• - 『日本書紀註釈（中）』（神道大系古典註釈編3）、神道大系編纂会、昭和60年（1985年）

参考文献

• - 宮地直一・佐伯有義監修『神道大辞典』第3巻、平凡社、昭和15年
• - 二藤京『日本書紀纂疏』における帝王の系譜 高崎経済大学論集第49巻第3・4合併号、2007

さらに、『日本書紀纂疏』に関する情報は新日本古典籍総合データベースにも掲載されています。

もう一度検索