日本橋 (花街)

日本橋花街の歴史

日本橋は、かつて東京都中央区の八重洲一丁目から日本橋三丁目にかけて広がっていた花街です。江戸時代から昭和にかけて、多くの芸妓や料亭が軒を連ね、賑わいを見せていました。

花街の成立

日本橋界隈に芸妓が登場したのは、1777年（安永6年）に刊行された『妓者呼子鳥』という書物に、常磐津の名取である「文字たみ」という人物がいたという記述が最初とされています。その後、天保の改革によって深川などの岡場所から逃れてきた芸妓たちが、日本橋周辺に集まり住むようになり、花街が形成されるきっかけとなりました。

芸妓衆は、現在の三越から日本銀行本店にかけての地域に集住し、日本橋の南側にも居住していました。彼女たちは、町名にちなんで「数寄屋町芸者」と呼ばれていました。

花街の発展

1892年、日本橋の北側と南側に分かれていた花街が合併し、日本橋に存在した魚河岸や商人を相手に発展しました。明治時代中期には、芸妓の数は約80名でしたが、日清戦争や日露戦争の際には230名にまで増加し、柳橋や芳町に並ぶ一流の花街として名を馳せました。

関東大震災とその後

1923年に発生した関東大震災によって、日本橋一帯は花街を含めて大きな被害を受けました。震災復興後、魚河岸は築地市場に移転したため、日本橋花街の主な顧客は、同地に残った商家や企業となりました。1929年には、芸妓287名、置屋127軒、料理屋9軒、待合51軒を数えるほどでした。

戦争による衰退と終焉

しかし、1937年に日中戦争が勃発し、1941年には太平洋戦争が始まると、戦時色が強まり、1944年に日本橋花街は営業を停止せざるを得なくなりました。翌1945年の東京大空襲によって壊滅的な被害を受けました。

終戦後の1950年に花街は復興しましたが、その後は衰退の一途を辿り、1960年に見番が閉鎖されたことで、日本橋花街はその歴史に幕を閉じました。

現在の日本橋

花街がなくなった後も、料亭は営業を続けましたが、その数は年々減少していきました。2019年現在、日本橋界隈で営業しているのは、料亭「や満と」と割烹「嶋村」（1850年創業）のみとなっています。

参考資料

松川二郎 著、渡辺豪（復刻編集） 編『全国花街めぐり』誠文堂／カストリ出版（復刻）、1929年。ASIN B01F7MAP64。
上村敏彦『東京 花街・粋な街』街と暮らし社、2008年。ISBN 978-4901317191。

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