日本海溝海底地震津波観測網

日本海溝海底地震津波観測網（S-net）とは

日本海溝海底地震津波観測網（S-net）は、防災科学技術研究所が運用する、房総半島沖から根室沖にかけての太平洋の深海に設置されたケーブル式のリアルタイム観測網です。海底地震計と海底圧力計を用いて、地震と津波を観測します。総延長約5,500km、150カ所の観測点を有する世界でも類を見ない大規模なネットワークです。

目的

S-netは、日本海溝と千島海溝南部で発生する海溝型地震や津波を直接検知し、その情報を迅速に伝達することを目的としています。具体的には、以下の3点を目指しています。

地震と津波の発生を早期に検知し、高精度で迅速な津波予測を行う。
情報伝達を通じて、被害の軽減や避難行動などの災害対策に貢献する。
24時間連続で観測データを取得し、関係機関に即時共有することで、監視や地震調査研究に活用する。

整備の背景

2011年の東北地方太平洋沖地震では、陸域の地震観測網による津波規模予測の精度に限界があることが明らかになりました。特に、陸上観測点から遠く離れた海溝付近での微小地震の観測が困難であり、地震規模や位置決定の精度も不十分でした。当時、東北沖の海底観測網は、東京大学地震研究所が設置したわずかな観測システムのみでした。これらの課題を解決するために、S-netの整備が計画されました。

整備計画

S-netは、6つのサブシステムと6つの地上局から構成されています。水深1500m以浅の海域では、観測装置と海底ケーブルは海底下に埋設されます。

サブシステムと観測点数

S1：房総沖 22点
S2：茨城・福島沖 26点
S3：宮城・岩手沖 26点
S4：三陸沖北部 28点
S5：釧路・青森沖 23点
S6：海溝軸外側（アウターライズ） 25点

地上局

S1とS6：千葉県南房総市白浜町滝口
S1とS2：茨城県鹿嶋市明石
S2とS3：宮城県亘理郡亘理町荒浜
S3とS4：岩手県宮古市崎山
S4とS5：青森県八戸市大字鮫町
S5とS6：北海道厚岸郡浜中町

沿革

2011年：計画立案
2013年度：房総沖(S1)の設置完了
2014年：三陸沖北部(S4)の設置開始、S-netの略称決定、宮城・岩手沖(S3)の設置開始
2016年：S-net125点のデータが気象庁の津波情報に活用開始
2017年：S-net25点のデータが気象庁の津波情報に活用開始
2019年：S-net125点のデータが気象庁の緊急地震速報に活用開始
2020年：S-net25点のデータが気象庁の緊急地震速報に活用開始。これにより、設置された150点全てのデータが観測に活用されることとなる。

汎用

S-netで取得されたデータは、JR東海やJR東日本の新幹線運行指令所にも即時転送され、新幹線の緊急停止判断にも活用されています。

関連情報

日本海溝：太平洋プレートが沈み込む海溝
地震観測網：地震を観測するネットワーク
高感度地震観測網 (Hi-net)：高感度な地震観測を行う全国ネットワーク
DONET：熊野灘沖の地震・津波観測監視システム
DONET2：潮岬沖から室戸岬沖の地震・津波観測監視システム
N-net：日向灘から四国沖の海域で整備が進められている地震津波観測網

外部リンク

* 防災科学技術研究所

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