日本真珠会館

日本真珠会館：真珠産業の歴史を語るモダニズム建築

神戸市旧居留地東町筋に位置していた日本真珠会館は、戦前から西日本における真珠取引の中心地として栄え、真珠業界の復興を支えた歴史的建造物でした。1952年、兵庫県と関西真珠協同組合の共同事業として建設され、近代化産業遺産にも認定されていました。

建物の特徴と歴史

設計は兵庫県営繕課、特に光安義光氏（後に営繕課長）が中心となって行われました。建物はモダニズム建築様式を採り入れ、水平と垂直の構成を強調した洗練された外観が特徴です。柱や壁面の骨格をそのまま見せることで、素材の質感を際立たせています。館内には、モダンな照明器具や螺旋階段など、当時の最先端のデザインが取り入れられていました。

竣工後間もなく、昭和天皇と皇后のご訪問を受けたという記録も残っており、その重要性がうかがえます。1980年には日本真珠輸出組合の所有となり、2008年には1階に「神戸パールミュージアム」が開設されました。このミュージアムでは、神戸と真珠の歴史、真珠の種類や育成過程などが展示され、多くの人々を魅了しました。

1990年代には、モダニズム建築の秀作として高い評価を受け、国の登録有形文化財にも登録されました。DOCOMOMO JAPAN選定の日本におけるモダン・ムーブメントの建築にも選ばれ、その建築史的価値は広く認められていました。

しかし、長年の歳月による老朽化が深刻化し、2023年3月末をもって日本真珠会館は閉鎖されました。現在、跡地には新たな複合施設の建設が進められており、日本真珠会館と神戸パールミュージアムの再オープンが計画されています。

館内の様子

日本真珠会館は地下1階、地上4階建ての鉄筋コンクリート造りでした。1階は黒御影石張り、2階と3階は乳白色タイル張りと、洗練された素材使いが特徴的です。

各階には、真珠業界の機能が凝縮されていました。1階には日本真珠輸出組合の事務所と神戸パールミュージアムが、2階と3階には真珠の品質検定所と真珠交換室（音楽ホール並みの残響1.5秒の音響設計がなされていたと伝えられています）が、そして4階には入札会場が設けられていました。

神戸パールミュージアム

2008年6月1日にオープンした神戸パールミュージアムは、真珠をテーマにした博物館として、多くの来館者を集めました。館内では、模型や実物を通して、神戸と真珠の歴史、真珠の種類や成長過程などが分かりやすく展示されていました。

日本真珠会館の閉鎖に伴い、神戸パールミュージアムも2023年3月末で休館となりました。収蔵品は神戸ファッション美術館に寄託され、現在は同館3階のライブラリーに展示コーナーが設けられ、かつての展示物を観覧できます。

アクセスと近隣施設

日本真珠会館は、交通アクセスも良好でした。阪神電鉄、JR、地下鉄など複数の駅から徒歩圏内に位置し、新神戸駅からも車ですぐの場所でした。近隣には、東遊園地、国土交通省近畿地方整備局港湾空港部、神戸関電ビルディング、アーバンライフ神戸三宮ザ・タワーなどがあります。

まとめ

日本真珠会館は、単なる建物ではなく、日本の真珠産業の歴史と発展を体現する重要な存在でした。その閉鎖は残念ですが、跡地での再開発によって、新たな形でその歴史と文化が継承されていくことが期待されます。神戸パールミュージアムの展示品の一部は神戸ファッション美術館で観覧できますので、興味のある方はぜひ訪れてみてください。

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