日本知的財産仲裁センター

日本知的財産仲裁センターは、ジャパン・インテレクチュアル・プロパティ・アービトレーション・センター（Japan Intellectual Property Arbitration Center）と呼ばれ、略称をJIPAC（ジェイアイパック）といいます。知的財産権に関する多様な紛争に対し、裁判以外の方法で解決を図る日本のADR（裁判外紛争解決手続）機関として機能しています。本センターは、紛争当事者からの相談に応じ、調停、仲裁、判定、そしてインターネット上のドメイン名に関する紛争裁定といった様々な手続きを提供しています。

沿革

本センターは、1998年3月26日に、公益社団法人日本弁理士会と日本弁護士連合会の共同により設立されました。当初は「工業所有権仲裁センター」という名称であり、同年4月1日には早速、調停および仲裁業務の運営を開始しています。設立から程なく、2000年10月19日には、インターネットの資源管理を行う日本ネットワークインフォメーションセンター（JPNIC）から、JPドメイン名に関する紛争処理機関として国内で初めて認定を受け、同日付で関連紛争の申立て受付を開始しました。その後の約10年間で、78件の仲裁手続きを取り扱っています。

設立から数年後の2001年4月には、名称を現在の「日本知的財産仲裁センター」に変更しました。これに伴い、紛争解決の対象を設立当初の工業所有権（特許、実用新案、意匠、商標など）に限定せず、より広範な知的財産権全般へと拡大しました。サービス内容も拡充され、2004年3月には「センター判定」、2006年4月には「センター必須判定」、そして2011年4月には「事業適合性判定」といった新たな判定サービスを開始しています。これらの実績が評価され、2012年11月には、民間紛争解決手続業務を行う機関として法務大臣からの認定（認定番号119号）を受けています。

業務内容

本センターは、知的財産に関する紛争について、主に以下のADR手続きを取り扱っています。

調停・あっせん: 紛争当事者間に第三者である専門家（弁護士・弁理士等）が入り、当事者の話し合いを促し、合意による解決を支援する手続きです。
仲裁: 当事者が選任した仲裁人が、当事者の主張や証拠に基づいて判断（仲裁判断）を下し、これに当事者が従うことで紛争を解決する手続きです。仲裁判断は裁判の判決と同様の効力を持ちます。
判定: 特定の技術や権利に関する専門的な見解を示すサービスです。後述する事業適合性判定などが含まれます。
ドメイン名紛争裁定: JPドメイン名に関する不正使用などの紛争を迅速に解決するための手続きです。

名称に「仲裁センター」とありますが、設立以来、手続きの利用件数としては仲裁よりも調停が多くなっています。しかし、知的財産紛争全体の中で本センターを利用する件数は決して多くはなく、特に2014年度以降は、年間における新たな申立てが5件未満という状況が続いています。

特徴的なサービス

事業適合性判定

企業などが新たな技術を事業に導入するにあたり、それが既存の特許権などを侵害するリスクがないか、あるいは関連する特許を有効に活用できるかといった点について、客観的な専門家（弁護士および弁理士）が第三者の立場から評価するサービスです。企業側との面談や詳細な先行技術調査の結果を踏まえ、開発段階から事業化に至る各段階に応じた多角的な見解を示し、特許紛争リスクを未然に回避するための助言を提供します。

事業に対する特許の貢献度評価

特定の事業において、関連する複数の特許がどの程度貢献しているかを専門家（弁護士および弁理士）が算定するサービスです。単に直接事業に使用されている技術に関する特許だけでなく、それを補完する技術や、将来的な防御・攻撃に資する特許、さらには国内・国外の関連特許なども考慮に入れて評価を行います。評価にあたっては、企業や外部調査機関との面談を通じて詳細な情報を収集します。この評価結果は、共同研究開発の成果を事業化する際の利益配分、大学等との産学連携における不実施補償額の算定、従業員の職務発明に対する適正な対価額の算出など、様々な場面で活用することができます。

手続きの代理

本センターにおける各種手続きは、弁護士または弁理士に代理を依頼することが可能です。特に弁理士は、弁理士法第4条第2項第2号において、知的財産に関する裁判外紛争解決手続の代理権限が明確に認められています。

組織

日本知的財産仲裁センターは、東京都千代田区にある弁理士会館内に東京本部を置いています。さらに、関西および名古屋に支部を、北海道、東北、中国、四国、九州にそれぞれ支所を設置しており、全国的な体制でサービス提供を目指しています。

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