日本紡績協会

日本紡績協会とは

日本紡績協会（にほんぼうせききょうかい、英文名称：Japan Spinners' Association）は、日本の紡績会社によって構成される歴史ある業界団体です。その起源は1882年（明治15年）に設立された紡績聯合会に遡り、近代日本における業界団体の草分け的存在の一つと位置づけられています。主に、会員企業の共通利益の追求と、日本の紡績業界全体の健全な発展に貢献することを目的として活動しています。

主な活動内容

当協会は、多岐にわたる事業を通じて紡績業界を支えています。主要な活動としては、まず紡績業に関する詳細な調査統計の収集・分析と、その結果に基づいた広報活動が挙げられます。これにより、業界の現状把握や将来予測に資する情報を提供しています。

また、紡績業界が直面する課題や要望を政府および関係機関に対して提言し、業界の発展に有利な政策形成に向けた働きかけを行っています。これは、日本の産業構造や国際貿易情勢の変化に対応し、業界の競争力を維持・強化するために不可欠な活動です。

さらに、「ジャパン・コットン・マーク」の使用許諾に関する業務も重要な事業の一つです。ジャパン・コットン・マークは、日本国内で生産された綿の原糸、生地、またはそれらを用いた製品であることを証明するものです。このマークには、綿を100%使用した製品向けのピュア・コットン・マークと、綿を50%以上使用した製品向けのコットン・ブレンド・マークの2種類があります。マーク自体の所有・管理は一般財団法人 日本綿業振興会が行いますが、当協会がその使用許諾業務を担うことで、消費者が安心して国産綿製品を選択できるよう支援しています。

歴史的歩み

協会の前身である紡績聯合会は、1882年10月に愛知紡績所の所長岡田令高の提唱により誕生しました。明治維新後、急速に近代化を進める中で紡績業が重要な産業として台頭する中、共通の課題に取り組む必要から設立されました。

設立後、名称を大日本紡績同業連合会、さらに大日本綿糸紡績同業連合会、大日本紡績連合会と何度か変更しながら活動を継続しました。特に、日本の紡績業にとって原料である綿花の輸入関税や、製品である綿糸・綿布の輸出入関税は重要な課題であり、協会は設立初期から度々政府への関税免除・引き上げなどの請願活動を行いました。また、国際的な物流網の確保も重要であり、ボンベイからの綿花輸送契約などが結ばれています。

20世紀に入ると、好不況の波に合わせて、業界全体で操業短縮を実施するようになります。1900年（明治33年）に始まった第3次操業短縮以降、不況期には計画的な減産を行うことで、市場の安定を図りました。これらの操業短縮は、大正時代、昭和初期にかけて繰り返し実施され、業界の秩序維持に大きな役割を果たしました。特に、1927年（昭和2年）の第10次操業短縮は、世界恐慌の影響を受ける前の段階で実施され、その後の不況期に対応するための体制づくりとなりました。

国際関係では、1930年代にインドによる綿布関税引き上げに対し、インド綿の不買を決議するなど、国益を守るための活動も行いました。また、国内の綿業団体の連携を強化するため、日本綿織物組合連合会などと共に綿業中央協議会を設立しました。

戦時色が強まるにつれて、産業統制が進み、1941年には全国の紡績業者が14ブロックに統合されました。1942年10月には大日本紡績連合会は解散し、東亜繊維工業会へと改組されました。

終戦後、日本の復興と共に紡績業も再建され、1948年には日本紡績協会として改めて結成されました。戦後の混乱期を経て、日本の主要輸出産業として復興を遂げる中で、協会の役割も再び重要になりました。1962年には、大阪府茨木市に全寮制の大阪繊維工業高等学校（現在の早稲田摂陵高等学校）を設立するなど、人材育成にも関わりました。

組織概要

日本紡績協会には、日本の主要な紡績会社が会員として名を連ねています。かつての十大紡績会社（十大紡）や六大紡績会社（六大紡）と呼ばれた企業の多くが、名称や形態を変えつつも会員となっています。例えば、倉敷紡績、シキボウ、ダイワボウホールディングス、東洋紡、日清紡ホールディングス、日東紡績、富士紡ホールディングス、ユニチカなどが現在の会員企業に含まれています。

協会の事務局は、本部が大阪市中央区の綿業会館内に置かれ、東京にも事務局が設けられています。

日本紡績協会は、日本の紡績産業の長い歴史と共に歩み、業界の基盤を支え、その発展に寄与し続けている団体です。関連です。密接な関係にある団体として、一般財団法人 日本綿業振興会が挙げられます。

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