日本魚類学会

日本魚類学会：魚類研究を推進する先端機関

日本魚類学会は、1968年4月3日に設立された、魚類に関する研究の進歩発展と、その成果の普及を目的とする学術団体です。日本列島を魚の形に模したロゴマークが象徴するように、日本の魚類研究の中核を担っています。団体会員を含め、約1300名もの会員が、多様な分野から参画しています。

幅広い活動と社会貢献

学会の活動は多岐に渡ります。最も重要な活動の一つに、学会誌の発行があります。『魚類学雑誌』と『Ichthyological Research』という2つの学術誌を通じて、会員による最新の研究成果や知見を国内外に発信しています。これらの学術誌は、魚類学研究において重要な情報源として、世界中の研究者から高く評価されています。

さらに、学会は毎年研究発表会やシンポジウムを開催しています。これらのイベントは、研究者間の交流を促進し、最新の研究動向を共有する場として機能しています。若手研究者育成のためのワークショップなども積極的に開催され、次世代を担う人材育成にも貢献しています。

近年、日本魚類学会は社会貢献にも積極的に取り組んでいます。特に、日本各地で行われている魚類の放流活動に対し、生物多様性の保全に配慮した『生物多様性の保全をめざした魚類の放流ガイドライン』を策定しました。このガイドラインは、放流による生態系への影響を最小限に抑え、生物多様性を保全するための指針として、関係各所に広く活用されています。

学術用語の適切な使用への取り組み

生物種には、歴史的経緯から差別的な表現を含む標準和名がつけられている場合があります。日本魚類学会は、このような問題を認識し、標準和名検討委員会を設置しています。現在、同委員会は「メクラ」、「オシ」、「バカ」、「テナシ」、「アシナシ」、「セムシ」、「イザリ」、「セッパリ」、「ミツクチ」といった差別的な表現を含む9種類の魚類の標準和名の改名を推進しています。これらの改名作業は、学術用語の適切な使用と、より包括的で公平な科学コミュニケーションを目指した重要な取り組みです。

歴代会長と学会の歩み

日本魚類学会は、設立以来多くの著名な魚類学者を会長として迎え、発展を遂げてきました。歴代会長の功績は、日本の魚類学の発展に大きく貢献したことは言うまでもありません。以下に歴代会長の一覧を示します。

岡田弥一郎 (1968/4/3－1969/12/31)
阿部宗明 (1970/1/1－1972/4/1、1978/4/1－1980/3/31)
石山礼蔵 (1972/4/1－1974/3/31、1980/4/1－1982/3/31)
黒沼勝造 (1974/4/1－1976/3/31)
中村守純 (1976/4/1－1978/3/31、1982/4/1－1984/3/31)
上野輝弥 (1984/4/1－1986/3/31、1988/4/1－1990/3/31)
岩井保 (1986/4/1－1988/3/31、1992/4/1－1994/3/31)
落合明 (1990/4/1－1992/3/31)
沖山宗雄 (1994/4/1－1995/12/31、1998/1/1－1999/12/31)
尼岡邦夫 (1996/1/1－1997/12/31、2000/1/1－2001/12/31)
松浦啓一 (2002/1/1－2003/12/31、2006/1/1－2007/12/31)
西田睦 (2004/1/1－2005/12/31、2008/1/1－2009/12/31)
後藤晃 (2010/1/1－2011/12/31)
木村清志 (2012/1/1－2013/12/31)
矢部衞 (2014/1/1－2015/12/31)
桑村哲生 (2016/1/1－2017/9/18)
細谷和海 (2017/9/19－2019/9/23)
篠原現人 (2019/9/24－2021/9/20)
* 瀬能宏 (2021/9/21－)

今後の展望

日本魚類学会は、今後も魚類に関する研究を推進し、その成果を社会に還元していく役割を担い続けていきます。生物多様性の保全、持続可能な水産資源管理、そして科学コミュニケーションの向上など、多様な課題に積極的に取り組むことで、日本の魚類学、ひいては生物学全体の進歩に貢献していくことが期待されます。

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