日比野寛

日比野 寛について

日比野寛（ひびのゆたか、1866年12月9日 - 1950年4月2日）は、日本の教育界と政治界で活躍した著名な人物です。彼は衆議院議員としての顔を持ちつつ、日本におけるマラソン指導の先駆者とも言われています。

生い立ち

日比野は愛知県中島郡大里村（現在の稲沢市日下部中町）に生まれ、旧姓は織田です。彼の家族は商家であり、三男として育てられました。愛知県中学校（旧制愛知一中、現在の愛知県立旭丘高等学校）を経て、第一高等学校に進学しました。しかし、彼は2年生の時に健康診断で胃腸疾患を抱えていることが判明します。このことがきっかけで、彼は健康維持のために「歩き方」や「姿勢」に注意を払うようになります。1895年には、帝国大学法科大学の英法科を卒業し、農商務省に勤務することになります。

愛知一中校長としての活動

1898年には日比野家に養子入りし、翌年1899年に母校である愛知一中の校長に就任しました。当時、学校内は生徒の不満が高まり、ストライキや教師への抵抗が横行する混乱した状況にあったため、彼の就任は期待されていました。日比野は教育者ではないものの、愛知県や文部省から「学校の正常化」を託され、その任務を担いました。

彼の教育理念は「抱き鯉主義」と呼ばれ、これは「生徒に寄り添いながら教育する」という考え方を示しています。就任初日からテニスコートに立ち、運動を教育に取り入れることで、生徒たちの関心を集めました。また、「病める者は医者へ行き、弱き者は歩き、健康な者は走る」との呼びかけで、生徒たちを運動に積極的に参加させました。これにより、彼は「マラソン校長」として知られるようになります。

日比野の指導のもと、愛知一中は日本有数のスポーツ強豪校へと成長し、1911年には日本初の生徒長距離競走が行われました。また、彼は1908年に「不遇な者の育英」を理念に「育英学校」を設立し、支援者を集めます。

政治活動とマラソン指導

1916年に愛知一中を退職した後、日比野は1917年の衆議院議員総選挙で憲政会から立候補し、当選を果たしました。政治家として活動する傍ら、彼は「日比野式走法」の普及にも努め、国内外でマラソンの指導を行いました。特に1917年に行われた「東海道駅伝徒歩競争」には50歳で参加し、大きな話題となりました。

その後、1922年には育英学校を改組し「名古屋育英商業学校」を設立しましたが、経営に苦しみ、私学経営から撤退することになります。日比野の教育理念とマラソン指導は生涯にわたって続けられ、彼の健康法や運動に対する取り組みは後の世代に影響を与えました。

記念と顕彰

日比野の業績を称える銅像は1966年に名古屋市瑞穂公園陸上競技場の近くに設置されています。この銅像は、彼が校長だった当時の愛知一中にあったものが戦時中に失われた後、復元されました。また、中日新聞社が毎年開催していた「中日マラソン大会」は第9回目から「日比野賞中日マラソン大会」と名付けられ、彼の偉業を称え続けました。

著作

日比野は多くの著作も残しており、その中には『日本臣道論』や『青年子女堕落の理由』などが含まれています。彼の著作は教育や健康に関する考え方を広め、弟子たちに多大な影響を与えました。

結び

日比野寛は教育者としての革新とマラソン指導の先駆者であり、彼の人生は日本の教育とスポーツ界に深く刻まれています。彼の理念と活動は、今も多くの人々に影響を与え続けています。

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