日無坂

日無坂は、東京都文京区目白台と豊島区高田の境を分ける、歴史と趣のある坂道です。目白通りから富士見坂へ入り、そこから分岐する形で現れる、階段状の急な坂道が特徴です。その名の通り、坂の両側は樹木が密生しており、日中でも日が差し込みにくいことから、「日無坂」という名前が付けられました。

この坂道の歴史は古く、江戸時代には既に存在していたことが、古地図である江戸切絵図などから確認できます。江戸切絵図には、日無坂が現在とほぼ同じ位置に描かれており、当時の様子を知る貴重な資料となっています。古地図に記された当時の姿と、現代に残る坂道の様子を比較することで、歴史の流れを感じ取ることができます。

坂道の全長は約160メートルあり、勾配がきついのが特徴です。歩きながら上を見上げると、空は木々の隙間からわずかに見えるのみで、まるで緑のトンネルを歩いているかのような感覚を覚えます。坂を上りきると、視界が開け、富士見坂との合流地点からは、新宿副都心の高層ビル群を一望できます。近代的な高層建築群と、歴史を感じさせる緑豊かな坂道の対比が印象的です。

日無坂は、文京区と豊島区の境界線でもあります。区境を示す標識などは特にありませんが、坂道を歩いていると、いつの間にか区が変わったことに気づくでしょう。この小さな坂道が、隣接する二つの区を繋いでいるという事実は、日無坂の歴史と位置づけを考える上で重要なポイントです。

周辺には、住宅街が広がり、静かで落ち着いた雰囲気です。坂道周辺には、歴史を感じさせる建造物や、緑豊かな公園なども点在しており、散策にも最適な場所となっています。日無坂を訪れる際には、ゆっくりと時間をかけて、歴史を感じながら坂道を歩いてみることをお勧めします。都会の喧騒を忘れ、静けさの中で、江戸時代の雰囲気を偲びながら、新宿副都心の近代的な景色を眺めることができる、そんな魅力あふれる坂道です。日無坂は、東京の街の中にひっそりと佇む、隠れた名所と言えるでしょう。

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