日産・MA09ERT

日産・MA09ERTエンジンについて

日産自動車が製造したMA09ERTエンジンは、特に日本の自動車史において注目に値するレシプロエンジンです。このエンジンは、日産が開発した唯一の量産型ツインチャージャーエンジンであり、ターボチャージャーとスーパーチャージャーの両方を兼ね備えた特異な構造を持っています。このようなエンジン設計は、日本の他の自動車メーカーには見られない特長であり、MA09ERTは高い動力性能を追求した結果生まれました。

エンジンの概要と性能

MA09ERTエンジンは、日産・マーチターボK10ETに搭載されていたMA10ETエンジンを基に、スーパーチャージャーを追加することで全域において高レスポンスを実現しています。スーパーチャージャーは低回転域での出力をサポートし、ターボチャージャーは高回転域でのパワーを強化します。この構成により、エンジンは低中回転域での優れた加速性能を発揮し、ドライバーに快適な運転を提供します。

競技用エンジンとしても評価されており、1987年から日産・マーチターボフェイスのレース用車両にプロトタイプとして搭載され、その後1988年には競技専用市販車である日産・マーチREK10FR型に採用されました。主にラリー競技で利用され、1989年には日産・マーチスーパーターボにも搭載され、高いパフォーマンスを披露しました。

エンジン機構の特徴

MA09ERTの基本的な構成は、MA10ETと同様の水冷直列4気筒SOHCを採用しています。シリンダー内径は66.0mm、行程は68.0mmで、総排気量は930ccに設定されており、特に注目すべきは、このエンジンの燃料噴射システムがシーケンシャルインジェクションである点です。これにより、燃料の噴射タイミングが最適化され、パフォーマンスが向上します。

スーパーチャージャーは低回転域からのトルクとレスポンスを向上させる役割を果たし、タイムラグなしに加速をサポートします。一方、高回転域の過給はターボチャージャーが担当し、ハイパワーを提供。これにより、高速域での優れた走行性能を実現しています。また、両者はバイパス制御弁によって滑らかに連携し、最大限の過給効果を得ることが可能です。

主要諸元

MA09ERTの技術的な詳細には、次のようなスペックがあります:

• - 総排気量: 930cc
• - 燃料室形状: 半球形
• - 弁機構: SOHC2バルブ
• - シリンダー内径×行程: 66.0×68.0(mm)
• - 圧縮比: 7.7
• - 最高出力: 110PS/6,400rpm
• - 最大トルク: 13.3kgm/4,800rpm
• - 燃料供給装置: 日産・ECCS

このように、MA09ERTエンジンは日本の自動車技術の粋を集めた存在であり、特にラリー競技においてその実力を遺憾なく発揮しました。今後もその技術的特長や性能は、多くの自動車愛好家にとって注目の対象であり続けることでしょう。

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